2006年
監督 クリストファー・ノーラン 出演 ヒュー・ジャックマン 、クリスチャン・ベイル
(あらすじ)
19世紀末のロンドン。ロバート・アンジャー(ヒュー・ジャックマン)とアルフレッド・ボーデン(クリスチャン・ベイル)の2人は、ともに一流マジシャンになることを目指すライバル同士。しかし、アンジャーの妻が脱出マジック中の事故で命を落としてしまい、その原因がボーデンにあるらしいという疑惑が生じたことから、二人のライバル関係は狂気に満ちた憎悪へと姿を変えていく…
クリストファー・ノーランが「バットマン ビギンズ(2005年)」の翌年に発表した異色作。
本作も、どこからともなく漂ってくるマガイモノ感が原因で長らく見るのを躊躇っていた作品の一つなのだが、そんな作品でも気楽に見ることが出来てしまうのがネット配信の良いところ。まあ、見る前の悪い予感は半分くらい当たっていたものの、逆に、そんなゲテモノ(?)をあえて取り上げたノーラン監督の意欲や自信を十分に感じさせる内容に仕上がっており、見たことを後悔するような作品にはなっていない。
さて、アンジャーとボーデンの対決に使われるのはマジックの大ネタである“瞬間移動”であり、酔っ払いのソックリさんを使ったアンジャーのそれがあっさり見破られてしまうのに対し、ボーデンの方は見せ方にやや難があるもののトリックとしては完璧。焦ったアンジャーは単身アメリカに渡り、あのニコラ・テスラ博士に瞬間移動マシンの作成を依頼する!
そんなマッドサイエンティスト(?)が作り上げたのは予想を上回るグロテスクなマシンであり、まあ、それが本作のマガイモノ感(=無から有を作り出せることの説明がない故、SFとは言えない。)の主要な原因になっているのだが、そのマシン利用した瞬間移動のトリックでアンジャーはボーデンを死刑台送りにすることに成功する!!
まあ、ここで終わっていたら単なるゲテモノ映画になっていたかもしれないが、本作にはもう一つ大きなトリックが残されており、それがボーデンの使っていた瞬間移動の種明かし。それは大金をつぎ込んだアンジャーのそれとは正に対極的な、悲しいくらいにストイックなトリックであり、そのために彼は自分の幸福の半分を犠牲にしていたことが判明する。
ということで、マジックのためなら全てを犠牲にしても悔いはないという酷いストーリーなのだが、暗喩のような伏線を巧みに張り巡らせることによってそのマガイモノ感をほぼ解消させてみせたノーラン監督の手腕は高く評価されるべきだろう。オールドファンであれば、あの「トワイライト・ゾーン」の新作だと思って見ればまず間違いはないと思います。