舞妓はレディ

2014年
監督 周防正行 出演 上白石萌音長谷川博己
(あらすじ)
京都の由緒ある花街である下八軒では舞妓不足が深刻であり、今いるのは三十路目前の百春一人だけ。そんなある日、百春のブログを読んで舞妓に興味を持ったという春子(上白石萌音)が老舗お茶屋の万寿楽に訪ねてくるが、女将の千春はどこの馬の骨とも分からない少女にけんもほろろの対応。しかし、偶然その場に居合わせた言語学者の京野(長谷川博己)は、春子の鹿児島弁と津軽弁の入り交じった方言に興味を抱く…


周防正行の脚本・監督による和製ミュージカル映画

ミュージカル映画は大好物なので、劇場公開当時、少なからず興味はあったのだが、さして世間の評判にはならなかったようであり、見に行こうか迷っているうちにあっさり公開終了。ちなみに、当時、本作の題名が「マイ・フェア・レディ(1964年)」のもじりであることに気付かず、娘に指摘されて初めて知ったというちょっぴり苦い思い出がある。

さて、そんな訳でようやくU-NEXTで見ることが出来たのだが、結論から言ってしまうと決して駄作とか失敗作とかではなく、それなりにとても楽しいミュージカル映画に仕上がっている。勿論、本家のようにスタンダードとして長く歌い継がれる名曲は見当たらないものの、いくつかの歌曲は十分魅力的であり、作品の雰囲気を上手く盛り上げている。

また、特筆すべきは、主演の上白石萌音の魅力であり、コメディエンヌとしてはまだまだ力不足だが、歌と踊りの切れ味はなかなかのもの。決して突出した美少女という訳ではないのだが、終盤に披露してくれる舞妓姿の初々しさは天下一品であり、これぞ“マイ・フェア・レディの神髄”というところだろう。

しかし、いくつか欠点が目立つのも事実であり、周防監督の脚本にしてはストーリーが弱く、さして面白くもない小ネタで場を繋いでいるように見えてしまうのがとても残念。また、草刈民代田畑智子の二人を脇役として両立させようというのは少々無謀であり、ここは前者を省いて、“三十路目前の舞妓の意地”をたっぷり描いて欲しかった。

ということで、最後にもう一つ、本作最大の欠点は岸部一徳扮する馴染みの旦那のセリフの中に潜んでおり、正直、そんな狒々爺(?)の口から舞妓の魅力が上から目線で語られるのは、聞いていてとても気持ちが悪い。おそらくそれは、存在感の極めて薄かった濱田岳扮する大学院生の役目だったのではないでしょうか。