2人のローマ教皇

2019年
監督 フェルナンド・メイレレス 出演 ジョナサン・プライスアンソニー・ホプキンス
(あらすじ)
2005年のコンクラーベで現教皇ベネディクト16世アンソニー・ホプキンス)に破れた改革派のホルヘ・ベルゴリオ枢機卿ジョナサン・プライス)は、その7年後、直接辞意を伝えるためにローマ行きを決意する。しかし、そんなところに届いたのが教皇からの直々の招待状であり、彼の別荘であるガンドルフォ城で面会を許されたベルゴリオは改めて辞任を申し出るが、保守派の教皇は頑としてそれを聞き入れようとしない…


またまた今年のアカデミー賞で主演男優賞など3部門にノミネートされているNetflix映画。

最初にネタをばらしてしまうと、このホルヘ・ベルゴリオ枢機卿なる人物こそ、昨年11月に来日を果たした第266代教皇フランシスコその人であり、Wikipediaによると「史実では、2012年にベネディクト16世とベルゴリオ枢機卿が会って双方の辞任について話した事実はな」いらしいのだが、その他の時代背景に関してはかなり事実に忠実のようであり、なかなか興味深い作品になっている。

さて、教皇がベルゴリオの辞意を認めたくない直接の理由というのは、「君の辞職を世間は教会批判と受け取るだろう」というものであり、まあ、教会トップにいる身としては教会内部における保守派と改革派との対立をあまり世間に大っぴらにしたくない、というところなんだろう。

勿論、それだけであれば、カトリック聖職者による性的児童虐待事件における現体制の手ぬるい対応を、改革派の急先鋒の一人として厳しく批判してきたベルゴリオが納得するはずもなかったろうが、実は、教皇にはそれまで自分の胸の内だけに秘めてきた強い願望があり、それはベルゴリオに教皇の地位を引き継いで欲しいというもの。

驚いたベルゴリオは、母国アルゼンチンの軍事独裁政権下における自らの“罪”を告白し、今度は逆に教皇の辞意を撤回させようとするのだが、結局、ベネディクト16世生前退位に伴う2013年のコンクラーベで新教皇に選出されてしまい、メデタシメデタシ。おそらく前教皇には、改革への舵切りを自らの手ですることを憚らせるような事情が山積みだったのだろう。

ということで、教皇フランシスコに対して極めて好意的な内容になっているのだが、まあ、「私は貧しい人々による貧しい人々のための教会を望む」という彼の発言は貴重であり、今後ともその立場からの活躍を期待したい。ちなみに、我が国の天皇にも彼くらいの自由な発言を許すというのも面白いかもしれないが(?)、やはりその場合には“世襲”というシステム自体の見直しが不可避になってくるのでしょう。