ファースト・マン

2018年
監督 デイミアン・チャゼル 出演 ライアン・ゴズリングクレア・フォイ
(あらすじ)
幼い娘を病で亡くしてしまったニール・アームストロングライアン・ゴズリング)は、NASAが進めるジェミニ計画の宇宙飛行士に応募し、見事に採用される。ソ連との宇宙開発競争に後れをとっていたNASAは次々に新しい課題に取り組んでいくが、その積極性に比例して人身事故も多発。そんな中、いつも冷静な態度を失わないニールはアポロ11号の船長を任されることになる…


アポロ11号で月着陸に成功した宇宙飛行士ニール・アームストロングの半生を映画化した作品。

若くして大ヒット作連発中のデイミアン・チャゼルの新作ということで、出来れば映画館で見たかったのだが、惜しくも同時期公開の「アクアマン(2018年)」にハナ差(?)で敗れてしまい、この度、DVDで鑑賞。しかし、結論を先に言ってしまうとこの判断は大きな誤りであり、断然こっちの作品を映画館で見るべきだった!

さて、本作は“月着陸成功”という人類史上の偉業を、何とニール・アームストロング個人の側から眺め返すという画期的な(?)内容であり、カメラは基本的に彼のそばを離れない。したがって着陸成功を祝う歓声は他人事みたいだし、地球に帰還した彼を迎えるのも決して彼の行動を100%承認しているとはいえない妻のジャネット(クレア・フォイ)ただ一人。

まあ、確かに“月着陸成功”というのは、人類にとっては歴史に残る輝かしい偉業であり、米国にとっては宿敵ソ連との宇宙開発競争における画期的勝利を意味するのだろう。しかし、アームストロング個人が“何故、危険を冒してまで月に行くのか”と問われた場合、その回答は意外に困難であり、結局は“わがまま”というところに帰着してしまうのかもしれない。

本作の冒頭にも、病に冒された娘を救うために奔走する主人公の姿がチラッと出てくるが、それを逆に言えば“娘が死んでくれたおかげで自分の夢を叶えられる”ということ。おそらく彼にとって“家族への罪悪感”というのは決して解くことの出来ない呪縛のようなものであり、出発前夜、自分の息子たちに向って何も言えなかったのもそのせいだったに違いない。

ということで、アナログ感満載の映像は今見るととても新鮮であり、確かに液晶もLEDも無かった頃はこうだったんだよなあ。一方、狭苦しい宇宙船のシートに縛り付けられて真っ暗な宇宙空間に放り出される感覚は、おそらく映画館での鑑賞を前提に描かれたものであり、繰り返しになるが、やっぱり映画館で見るべき作品でした。