2016年
監督 J.A.バヨナ 出演 ルイス・マクドゥーガル、シガーニー・ウィーヴァー
(あらすじ)
13歳のコナー(ルイス・マクドゥーガル)は闘病中の母親リジーと二人暮らし。彼女の病状は思わしくなく、コナーは、地面の裂け目に落ちていく母親をどうしても助けられないという悪夢に夜ごと悩まされているのだが、そんなある夜のこと、彼の前にイチイの木の怪物が現われ、“俺がこれから3つの物語を話してやる。それが終わったら最後はお前の真実を語れ”という謎の言葉を残して帰って行く…
イギリスの児童文学を「パンズ・ラビリンス(2006年)」の製作スタッフが映画化したダークファンタジー。
本作の存在を知ったのは、あの壮大な失敗作「ジュラシック・ワールド/炎の王国 (2018年)」を見たことがきっかけであり、その作品で監督を務めたJ.A.バヨナの経歴を調べているうちにふと本作の奇妙なタイトルが目に止まる。まあ、怪獣と恐竜とでは親戚同士みたいなものだが、作品の紹介を読んでみるとどうやらおバカ映画ではないらしい。
そんな訳で本作を拝見させて頂いたのだが、正直、「ジュラシック・ワールド~」を撮るような監督の作品とは全く思えないくらいに純真かつ繊細な作品であり、コナー少年の孤独、苦悩、悲しみが痛いほどヒシヒシと伝わってくる。ラストに用意された微笑ましい種明しがせめてもの救いだが、そこに至るまでは見ている方も辛いったらありゃしない。
勿論、母親が(おそらく)不治の病に冒されているのは悲しいことだが、彼のさらなる悲劇はその悲しみを受け止めてくれる人物が周囲に見当たらないこと。母親の前では死はタブーであり、“死なないで”と言って母にすがりつくことも出来ないし、周囲の人々は腫れ物に触るような扱いで彼に接し、彼がどんなイタズラをしても決して罰しようとしない。
ストレスに耐えきれなくなった彼は、無意識のうちにそんな状況を終らせたいと思うようになるのだが、それはすなわち母親の死を願うことであり、悪夢の中で裂け目に落ちようとする彼女の手を離してしまうのはそんな隠された願望の現れだったというのは、う~ん、ちょっと話が上手く出来すぎかなあ。
ということで、人間心理の複雑さを学んだ彼は、ようやく“死なないで”と言って母にすがりつくことが出来るのだが、まあ、製作側もこれで終わりにするのはさすがにキツイと考えたらしく、イチイの木の怪物のお話は亡き祖父から母親に伝えられ、おそらく彼女がそれを幼かったコナーに語り聞かせていたのだろうという種明しをして静かなハッピーエンド。主演のルイス・マクドゥーガルの名演技が光る佳作でした。