ヘレディタリー/継承

2018年
監督 アリ・アスター 出演 トニ・コレット、アレックス・ウォルフ
(あらすじ)
ミニチュア模型アーティストのアニー・グラハム(トニ・コレット)は、夫のスティーブ、高校生の息子ピーター(アレックス・ウォルフ)、それに13歳の娘チャーリーとの4人家族。長年疎遠であった母エレンの死を上手く受容できずにいた彼女は、同じ悩みを持つ人々とのグループ・カウンセリングに参加するようになるが、そんなある日、ピーターが妹のチャーリーを事故死させてしまうという痛ましい悲劇が…


昨年公開されて一部で高い評価を受けていたホラー映画。

観客をハラハラドキドキさせるような演出は比較的控えめである故、無事、結末まで見届けることが出来たが、本作は“家族間の葛藤”を描いた社会派的側面と“悪魔崇拝”を取り扱ったオカルト的側面の両方を併せ持っており、前者のテーマになるのが自分の過失によって妹を死なせてしまったピーターとそれを許すことが出来ない母アニーとの愛憎劇。

まあ、何もなかったにしても高校生くらいになれば息子と母親の関係は疎遠になりがちなものだが、本作の場合、それに加えてチャーリーの事故死という重大な特殊要因が存在しているため事態は深刻。いくら“加害者”とはいえ大きなショックを受けているに違いない息子に対し、アニーは何ら救いの手を差し伸べようとしないのだが、う~ん、これって子どもに対する虐待の部類だよね。

正直、このテーマだけでも十分に一本の作品になると思うのだが、本作にはそれに関するオカルト的解釈が付与されており、その黒幕になっているのが今は亡きアニーの母親エレン。彼女の葬儀には見知らぬ大勢の男女たちが集まってきてアニーが驚くというシーンがあるのだが、そんなエレンの正体は悪魔崇拝カルト教団の女王様だった!

つまり「ローズマリーの赤ちゃん(1969年)」の後日談みたいな話であり、エレンは悪魔に捧げる男子を望んでいたのだが、本能的に(?)その危険を察知したアニーはピーターの代わりに妹チャーリーの養育をエレンに托す。そんな祖母の薫陶を受けて育ったチャーリーは、自らの命を犠牲にしてアニーとピーターとの仲を引き裂くことに成功し、哀れピーターは悪魔崇拝者たちの手中に落ちる、っていうところかな。

ということで、最初、オカルト映画と見せかけて実は子どもの虐待を批判的に描いた社会派映画なんだろうと思って見ていたら、終盤はどんどんオカルト路線へと突っ走ってしまい、まあ、そういった意味ではやや期待外れ。しかし、本作の発する“いや~な感じ”はなかなかのものであり、末永く記憶に留まってしまいそうな気がします。