残雪期の燕岳(1日目)

今日は、妻と一緒に北アルプスにある燕岳に向けて出発する日。

GW中はどこも混んでいるだろうが、まあ、残雪期の北アルプスなら一般の観光地ほどではないだろうと考えて燕山荘に宿泊の予約を入れたのが2ヶ月前のこと。妻が本格的な山小屋を利用するのは今回が初めてになるが、行き届いたサービスで定評のある燕山荘ならきっと気に入ってもらえるだろうと願いつつ、いざ、北アルプスへ。

登山口のある中房温泉の駐車場はいつも混んでいるらしいので、安曇野の里の駐車場に車を止めて午前6時20分発のバスに乗る。その後、穂高駅等のバス停で数人乗り込んできたものの小型のバスが満員になる程ではなく、意外に空いているのかもと期待してみたが、やはり中房温泉の駐車場には車が溢れており、う~ん、相当賑やかな山行になりそうだなあ。

さて、中房温泉の登山口にあるベンチで身支度を整えて8時ちょうどに出発。“まだ冬山の装備で!”という警告に従っていろいろ着込んできたのだが、幸い風は穏やかで日差しも暖かく、アッと言う間に身軽になって8時48分に第一ベンチ。降りてくる登山者のアドバイスに従って、ここでアイゼンを装着する。

前歯付きのアイゼンを使用するのも妻は今回が初めてだが、昨年の雲竜渓谷での経験が自信になっているらしく、全くの無問題。スピードは決して速くないが、北アルプス三大急登の一つに数えられる合戦尾根を第二ベンチ(9時46分)~第三ベンチ(10時42分)と着実に上っていく。

計画では燕山荘までの所要時間を7時間とみており、この分なら大丈夫だろうと思っていたら、妻から“踵にマメが出来たみたい”との申告があり、雪の斜面に彼女を座らせてバンドエイドと伸縮テープとで応急処置。幸い大したことは無さそうであり、本人の気力もまだ十分なので迷わず続行を決意し、富士見ベンチ(12時00分)~合戦小屋(12時51分)。

ここまで来てしまえば残りは1/3くらいであり、燕山荘到達を確信して大休止。我が家としては珍しく、今回は水2.5Lにガスボンベ&バーナーを持参してお湯を沸かしてみたのだが、何故か周囲でバーナーを使用している例は皆無であり、う~ん、燕岳のようなお洒落な山ではお湯やカップ麺は山小屋で調達するのが普通なのかしら。

ちなみに、今回はお湯を沸かすだけなので小ぶりのヤカンをザックに括り付けて来たのだが、お洒落な登山者の目にはこれも奇異に映ったらしく、翌日の下山中に見ず知らずの方から2度ほど指摘を受ける。そんなに目立つのなら、これからも愛用して“ヤカン親父”で売り出してやろうかと思ったが、残念ながら妻の支持は得られなかった。

さて、13時25分に再出発し、眼前に立ち塞がる雪の急斜面を一歩ずつ上っていく。途中で槍ヶ岳の頭が見えたので妻に教えてあげたが、どうやら景色を楽しんでいる余裕は無さそうであり、最後の力を振り絞って13時52分に合戦沢の頭にたどり着く。ようやく妻の表情にも笑顔が戻ったようであり、北アルプスの山々やポツンと見えている燕山荘の建物を眺めながら一休み。

ところが、“もう少し”と気が緩んだのがマズかったようであり、なかなか近づいてこない燕山荘に妻の気力も途絶えんばかり。おそらく今回の山行でここが一番大変だったと思うが、まあ、諦めずに歩き続ければいつかは目的地に着く訳であり、15時17分にお待ちかねの燕山荘に到着。随分時間が掛ったような気がしたが、7時間の予定を17分オーバーしただけだった。

受付後、案内されたのは階段を3つか4つ上った先にある行き止りのような部屋だったが、幸い妻は壁際をキープすることが出来たので、まあ、良しとしておこう。我々の後からも数人宿泊客が案内されてきたので、結局、2畳に3人の割当てになってしまったが、疲れているので燕岳挑戦は明日に回し、布団の上でゴ~ロゴロ。

ということで、その後、ちょっと外に出てみたが風が冷たいので早々に館内に引き返し、ケーキを食べながらのコーヒータイム。夕食を食べてしまうと後はやることもないので早々に布団に潜り込む。妻の話によると俺の隣に寝ていた男性のイビキがうるさかったらしいが、しっかり耳栓をしていたおかげで何とか一晩堪え忍ぶことが出来ました。