ボーダーライン

2015年
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演 エミリー・ブラントベニチオ・デル・トロ
(あらすじ)
FBIの誘拐即応班を指揮していたケイト(エミリー・ブラント)は、その活躍が認められ、メキシコの麻薬組織の壊滅を目的とする特殊部隊の一員にスカウトされる。リーダーのCIA捜査官マットやコンサルタントとして同行するコロンビア人のアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)等とともにメキシコ国境へ向うケイトだったが、そこで彼女を待っていたのは正義や法律の一切通用しない苛酷な修羅場だった…


鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴが「メッセージ(2016年)」の前年に監督したアクション映画。

先日拝見した「ウインド・リバー(2017年)」がとても面白かったので、同じテイラー・シェリダンが脚本を担当している西部劇「最後の追跡(2016年)」を見てみようと思ったのだが、Netflix作品のせいか、DVD化されていないことが判明。仕方がないので、もう一つ前のこの作品を見ることにした。

さて、そんな経緯もあって内心期待していたのは“現代版西部劇”だったのだが、同じ無法地帯でもネイティヴ・アメリカンの保留地とメキシコ国境の麻薬地帯とでは事情が全く異なるようであり、眼前に繰り広げられるのは西部劇でも、サスペンスでもなく、完全な戦争物。いつどこから銃弾が飛んできてもおかしくないような状況が連続し、もう、この緊張感の高さは半端ない。

ろくに状況の説明も受けずにそんな“戦場”に放り込まれたケイトは事情が上手く飲み込めず、結果的に失敗を繰り返すことになってしまうのだが、正直、その責任は彼女にあるのではなく、状況の方が異常すぎるだけ。そんな彼女にもいつか名誉挽回の機会が回ってくるだろうと思って見ていたが、結局、最後に敵ボスを倒すのはアレハンドロの方だった。

まあ、この大胆な主役の切替えも見事だが、ケイトのFBIの同僚で元海兵隊員のレジーというキャラクターを配し、彼がケイト以上に“使えない”ところを見せることによって、“やっぱり女は使いものにならない”という観客の誤解を避けるといった配慮も万全。やはりテイラー・シェリダンのシナリオは上手いもんだなあ。

ということで、小心者の俺にとっては極めて心臓に悪いものの、とても面白い作品であることは間違いない。実は、やはりシェリダンの脚本で、昨年、続編の「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ(2018年)」という作品が公開されているらしいのだが、はてさて、それを見る勇気が湧いてくるかどうか、正直、ちょっと心配です。