2017年
監督 ジョーダン・ピール 出演 ダニエル・カルーヤ、アリソン・ウィリアムズ
(あらすじ)
黒人青年のクリス・ワシントン(ダニエル・カルーヤ)は、白人の恋人ローズ・アーミテージ(アリソン・ウィリアムズ)の求めに応じ、彼女の実家で数日間滞在することになる。娘の恋人が黒人とは知らされていない彼女の両親の反応に不安を抱くクリスだったが、閑静な湖畔の一軒家に住んでいるアーミテージ家の人々はとても友好的であり、彼を暖かく歓迎してくれたが…
今年のアカデミー章で脚本賞に輝いたジョーダン・ピール監督のホラー映画。
脚本賞の大本命だった「スリー・ビルボード(2017年)」を押しのけて受賞を果たしたのが、コメディアン出身の新人監督が脚本も手掛けた作品ということで、どんな内容なのか見る前から興味津々。実は、劇場公開時における高評価を娘から聞いてはいたのだが、お互いホラー映画は苦手ということで映画館での鑑賞を見送った経緯がある。
さて、恐怖感に耐えられるよう晴天の昼間に拝見したのだが、人が次々に惨殺されていくというようなストーリーではないので、正直、見ていてそんなには怖くない。鹿との接触事故や深夜の全力疾走のシーンではドキッとさせられたものの、どちらかというと不気味な雰囲気をジワジワと盛り上げていくような系列の作品らしい。
まあ、その後も決して退屈するようなことは無いものの、終盤、字幕に出て来た“凝固法”の意味が良く理解できず、“これで脚本賞?”という思いがチラッと脳裏をかすめたときに発せられる“おじいちゃん”の一言ですべての伏線を一気に回収。うん、このスッキリ感は間違いなくアカデミー賞レベルだね!
鑑賞後、改めて思い返してみると、“おじいちゃん”がオリンピック候補の座を黒人選手に奪われた陸上選手だったことや、アーミテージ家のホームパーティーに招待された別の黒人男性が黒人流の挨拶に慣れていなかったこと等、見ているときにはピンとこなかった小ネタが満載。もう一度見直してみたら新たな発見が沢山見つかるのかもしれないなあ。
ということで、表面的には歪んだ黒人崇拝が犯行動機のように見えるのだが、黒人の肉体だけを求めるという行為は彼らの人格を否定していることに他ならず、やはり立派な黒人差別になるのだろう。アーミテージ家のホームパーティーに招かれたゲストの中に日本人らしき人物が紛れていたのがとても残念です。