2014年作品
監督 エヴァ・デュヴァネイ 出演 デヴィッド・オイェロウォ、トム・ウィルキンソン
(あらすじ)
1965年のアメリカ。前年にノーベル平和賞を受賞したキング牧師(デヴィッド・オイェロウォ)は、新しい投票権法の議会提案を躊躇うジョンソン大統領(トム・ウィルキンソン)に圧力をかけるため、アラバマ州セルマから州都モンゴメリーまでの大規模なデモ行進を企画。この試みは州知事によって武力鎮圧されてしまうが、TV放映された州警察らの暴力行為が多くの国民の反感を買うことになり…
1965年3月7日に起きた「血の日曜日事件」の前後の状況をキング牧師を中心にして描いた歴史ドラマ。
当時のアラバマ州では選挙で投票するためには“有権者登録”をする必要があったのだが、その際、黒人の有権者に対しては様々ないちゃもんを付けて登録を妨害していたらしい。本作の舞台になったセルマでは、黒人の人口が過半数を占めていたにもかかわらず、実際に投票権を有していたのはそのうちの2%未満であり、これでは差別的な白人の保安官を罷免することも出来ない。
そんな不当性を社会に訴えるためにキング牧師らによって計画されたのがセルマからモンゴメリーまでのデモ行進なのだが、どうやら州知事による妨害があるのは最初から織り込み済みだったようであり、(まんまとその罠に嵌まった?)州警察や保安官が無抵抗の黒人たちを迫害する様子がTV放映されることによって多くの国民の同情を集めることに成功する。
本作では、そんなキング牧師の(非情とも言える)策士ぶりやFBIによる盗聴・録音によって明らかにされた浮気の事実(=作中では妻からの質問に一応NOと答えているが、彼女がその答えを信じていないのは間違いない。)等、聖人らしからぬ一面も描かれているのだが、やはり前面に取り上げられているのは困難な改革を推し進めようとする彼の苦悩や努力、勇気といったものであり、見終わった後も彼に対する畏敬の念は少しも変わるところはなかった。
ということで、FBIによる違法な盗聴・録音を指示していたのは勿論あのフーヴァー長官だった訳であるが、我が国の現政権の周囲からもこれに似たようなハレンチな噂がちらりほらり。そんな輩に共謀罪という危険なツールを渡してしまうのはまさに愚の骨頂というべきでしょう。