アイアムアヒーロー

2015年作品
監督 佐藤信介 出演 大泉洋有村架純
(あらすじ)
35歳になってもうだつが上がらない漫画家の鈴木英雄(大泉洋)は、ある日、しびれを切らした同棲中の恋人である徹子からアパートを追い出されてしまい、唯一の趣味であるクレー射撃用の散弾銃とともに公園のベンチで一夜を過ごす。翌日、アパートに戻ってみると、ベッドに横たわっていた徹子は突如として異形のモンスターへと変貌し、彼に向かって襲いかかってくる…


週刊誌に連載中の漫画を原作にした和製ゾンビ映画

本作ではZQN(ゾキュン)と呼ばれているのだが、噛まれることによって次々に人に感染していき、頭部を破壊されると動かなくなるという設定は一般のゾンビ映画とほぼ同じ。実は主人公たちが気付かないうちに彼等の周辺で感染がジワジワと拡大していったらしいのだが、脚本が下手なためにそれによる恐怖感はほとんど観客には伝わらず、“ある日突然大量のZQNが発生した”みたいに見えてしまっているのがちょっと残念。

また、ヒロインの有村架純が演じているのは、(理由は明らかにされないが)完全なZQNになる一歩手前のところで病の進行が停止してしまった謎の女子高生の役であり、いわば半ZQNの状態で主人公の逃避行に同行することになる。一度だけ超人的な能力を発揮して彼の窮地を救うものの、それ以降は半分眠ったような状態に陥ってしまい、結局、ラストまで何もしないまんま。

おそらく連載中の原作漫画の方で彼女に関する謎が未だ解明されていないため、そんな中途半端なキャラクターにせざるを得なかったのだろうが、何も知らされていない観客にとってみればまだ火の通っていない生焼けの料理を食べさせられているのと同じこと。何故この時点で映画化しようと考えたのかは知らないが、せめて何らかの方法で完結した作品ではないことを事前にアナウンスしておくべきだったと思う。

ということで、これら以外にも文句を付けたいことは山ほどあるのだが、本作の最大の問題は、散弾銃でZQNの脳天を吹っ飛ばすシーンだけを観客に見せておけば良いや、という制作サイドの志の低さ。一応、主人公の成長譚的なテーマもあるにはあるのだが、内容が陳腐すぎるためにグロさ満点の映像に埋没してしまったっていう感じかなあ。まあ、本作を映画館に見に行かなかったことがせめてもの救いであり、続編が作られたとしても見ることは無いと思います。