強風の宝永火口

今日は、妻と一緒に富士山の宝永火口周辺を歩いてきた。

富士山にはこれまで(いずれも単独で)2度ほど登ったことがあるのだが、“宝永火口”なるビュースポットの存在に改めて気付かせてくれたのが昨年10月に放映されたNHKの「ブラタモリ」。一緒にその番組を見ていた妻に“マイカー規制前の今のうちなら車で5合目まで行けるけど”と話してみたところ、二つ返事で交渉成立となった。

さて、富士宮口の駐車場に着く前に残り少なくなったガソリンを補給しようと思ったが、東富士五湖道路の須走料金所で高速道路を下りて以降、ガソリンスタンドの姿が一つも見当たらない。やむを得ず、一度、富士宮の市内まで下って給油を済ませてから富士宮口に向かったため、駐車場に着いたときには予定の午前8時をかなり過ぎていた。

考えることは皆同じなのか、道路沿いに整備された駐車場はほぼ満車に近いような状態であったが、運良く比較的登山口に近いところに1台分の空きがあったのでそこに駐車。天気予報を見てちょっぴり心配していた風の状態もそれ程ではなく、青空の下に広がるきれいな雲海を見下ろしながら、8時37分に5合目登山口を出発する。

しばらくは富士山頂を目指すのと同じコースを進んで行くが、富士山初挑戦(?)となる妻はやや緊張した面持ち。“ツアー客のペースはもっと遅いくらいだよ”等と話しているうちに6合目にある雲海荘(8時58分)に着くが、まだ疲れた様子はないので休まずに分岐を直進し、宝永火口に向かう。

ほぼ平坦になった道を快調に進んでいくと、いつしか異様な風景が眼前に開けてくるようになり、9時10分に宝永第一火口縁に着く。やはりTV画面とは比較にならない大迫力に夫婦揃ってテンションは急上昇。対象が大きすぎてスマホのカメラに収まりきらないのが残念だが、いろんな構図で何枚も写真を撮ってから火口の底(9時22分)に下りていく。

ここから宝永山までが本日のメインイベントであり、砂でズルズルと滑る歩きにくい斜面を一歩一歩上っていく。ペースはガクッと落ちるものの、それは周囲の皆さんも同じようなものであり、なかなか近付いてこないあちら側の“縁”を目指して悪戦苦闘。6年前、御殿場口から歩いたときにも深い砂に手こずったことを懐かしく思い出す。

それでも足を動かし続けてさえいればゴールは近付いてくる訳であり、2つ目の角を曲がれば目指す“馬の背”はもう遠くない。しかし、ここにきて今度は強風に悩まされるようになり、度々立ち止まっては風に吹き飛ばされないよう両足で踏ん張らなければならない。下ってくる登山者からも“上は立っていられないよ”というアドバイスを頂戴したが、まあ、とりあえず馬の背まで行ってみよう。

そんな必死の思いで馬の背の標識まであと2mくらいに近付いた(10時24分)が、稜線上の強風はそれまでにも増してもの凄く、(本当に!)とても立っていられない。まあ、これが富士山頂であれば“風が収まるのを待つ”という選択肢もあるのだろうが、相手が宝永山ではそんな執着心は湧いてこず、あっさり撤退を決めて火口の底(10時57分)まで戻ってくる。

火口の底でも時々突風が吹くので大きな岩の陰に隠れて大休止。再出発(11時21分)後は宝永第一火口縁(11時33分)から宝永第二火口縁(11時43分)まで下り、その先の樹林帯の中を小学生の団体さんの後に付いてのんびり歩いて12時21分に5合目登山口まで戻ってくる。本日の総歩行距離はちょうど6kmだった。

ということで、御胎内温泉健康センターに立ち寄って体中に入り込んだ砂を洗い流してから無事帰宅。宝永山にたどり着けなかったのはちょっと残念だが、今回、妻に富士山の魅力の一端を味わって頂けただけでも大きな収穫であり、体調等が予定どおり整えば9月上旬にでも本格的な富士登山にチャレンジしてもらう予定です。