愛の勝利

1939年作品
監督 エドマンド・グールディング 出演 ベティ・デイヴィス、ジョージ・ブレント
(あらすじ)
若くて裕福なジュディス(ベティ・デイヴィス)は、数ヶ月前から原因不明のめまいや頭痛に悩まされており、ある日、それが原因で乗馬中に事故を起こしてしまう。自分の病気を認めるのが怖い彼女は、その後も主治医の言いつけを聞かずに奔放な暮らしを続けていたが、誠実な脳外科医のスティール医師(ジョージ・ブレント)に出会って心を改め、彼の診察を受けることに….


全盛期の頃のベティ・デイヴィスが主演を務めた純愛ドラマ。

ジュディスの病名は脳腫瘍であり、スティール医師の手術によって症状は一時的に改善するものの、腫瘍は悪性で再発を免れない、というストーリーは、間違いなく俺が最も苦手とする“難病もの”。序盤で、彼女の亡父がチャレンジャーと名付けた障害競走用の競走馬が登場するので、そっちの方向にもストーリーは展開するのかとちょっと期待しながら見ていたのだが、残念ながらそうはなっていない。

題名(=原題は「Dark Victory」)と名前との関連や、調教師のマイケル役に当時売り出し中だったハンフリー・ボガートを起用していること等から考えて、当初の脚本ではもっとこの競走馬に脚光が当てられる予定だったように思えるのだが、何らかの理由(=ベティ・デイヴィスの我がまま?)によって変更されてしまったのだろう。

まあ、そんな訳でストーリー的にはあまり面白いとは言えないのだが、そんな弱点を補って余りあるのがベティ・デイヴィスの魅力。不安→安心→希望→絶望→受容といったように目まぐるしく変化する主人公の心理状態に応じて様々な表情を演じてみせる力量はさすがであり、特に、自分の不幸な運命を知らずにスティール医師との婚約を無邪気に喜んでいるジュディスの姿は、(ありきたりとはいえ)見る人の涙を誘わずにはおかない(?)。

実は、本作公開当時のベティ・デイヴィスの年齢は31歳であり、23歳という設定のジュディスを演じるために8歳サバを読んでいるのだが、そのスレンダーなスタイルと大きな瞳のおかげもあって全く違和感は無い。外見的には、「glee」でエマ先生を演じているジェイマ・メイズに似ているのだが、当然、存在感という点では全く比較にならない。

ということで、本作は1963年(=スーザン・ヘイワード主演)と1976年(=エリザベス・モンゴメリー主演)にリメイクされているそうであり、“難病もの”のジャンルでは古典的作品なのかもしれない。それらの作品における名馬チャレンジャーの扱いが気になるところであるが、まあ、おそらく拝見する機会は無いものと思います。