ホテル・ルワンダ

2004年作品
監督 テリー・ジョージ 出演 ドン・チードルソフィー・オコネドー
(あらすじ)
1994年、フツ族ツチ族の対立が続くルワンダの首都キガリ。4つ星の高級ホテル“ミル・コリン”の支配人として働いているポール(ドン・チードル)は、愛する妻のタチアナ(ソフィー・オコネドー)と3人の子どもに囲まれて裕福な暮らしを送っていた。しかし、フツ族出身の大統領の暗殺を機に民族間の対立は一気に激しさを増し、多数派であるフツ族民兵ツチ族の人々を虐殺する事態へ….


1994年に起きたルワンダでの大量虐殺事件をテーマにした作品。

ポール自身は多数派のフツ族なのだが、妻のタチアナがツチ族ということで、不安になった近所のツチ族の住民が彼を頼って自宅に押しかけてくる。幸い、彼が支配人を務めるホテルはベルギー人がオーナーであり、そこに避難したポールたちに対しては、フツ族民兵等もそう簡単に手出しは出来ないのだが、混乱が長引くにつれて避難民の数も増え続け、ポールはその千人を超える人々を救うために孤軍奮闘するというストーリー。

まあ、こう書いてしまうと、まるで我が身を顧みずに他人のために尽くした偉人伝のように思えてしまうのだが、本作で描かれている主人公は、外国人向けの一流ホテルの支配人という地位を利用して政府軍の高官や海外の有力者たちとのコネを作り、万が一の場合には彼等に自分の家族だけを助けてもらおうと考えていた“凡人”に過ぎない。

多くの避難民を救おうとした動機にしても、正義感や責任感というより、NOと断り切れない人の良さが災い(?)して、結果的にそうなってしまったという印象が強く、逆にそんなところが観客が主人公に対して素直に好感を抱く大きな理由の一つになっているのだろう。

また、ショッキングなエピソードがてんこ盛りの題材ということで、もしハリウッドが製作していたらとても正視に耐えない恐ろしい作品になっていたように思うのだが、脚本にも参加しているテリー・ジョージ監督は徒に緊迫感を煽るような演出を控え、一貫して主人公ポールの目線から作品を描くことに徹してくれたおかげで、チキンな俺でも、無事、最後まで見届けることが出来た。

ということで、今回の加害者はフツ族であり、ツチ族は被害者だった訳であるが、時代や状況が変わればこの関係が逆転していたかもしれず、このことをもってフツ族を凶暴な民族と決めつける訳にはいかない。それは旧日本軍による南京大虐殺についても同様であり、日本人の凶暴性を否定するためにその歴史的事実を改竄しようとする必要は全くないと思います。