ウルフ・オブ・ウォールストリート

2013年作品
監督 マーティン・スコセッシ 出演 レオナルド・ディカプリオジョナ・ヒル
(あらすじ)
1987年のブラックマンデーで職を失った証券マンのジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)は、パートナーのドニー(ジョナ・ヒル)と一緒に26歳で自分の投資会社を設立。巧みなセールストークとモラルなき悪徳商法を武器に会社を急成長させたジョーダンは、マスコミから“ウルフ・オブ・ウォールストリート”と呼ばれるようになるが、同時にFBIも彼の躍進ぶりに目を付けていた…


マーティン・スコセッシレオナルド・ディカプリオのコンビによる実話を基にした作品。

ストーリー自体は非常に単純であり、違法な商売によって短期間のうちに巨万の富を手に入れた主人公が、やがてFBIの捜査によって罪を暴かれ、家庭や財産を失ってしまうというだけ。しかし、もちろんこれだけで上映時間が179分に膨れ上がるはずは無く、その大半は主人公とその取り巻き連中による狂騒的な日々の暮らしぶりの描写に費やされている。

まあ、実話ベースというのだからある程度は信じざるを得ないのだろうが、主人公が最初に勤めることになるごく普通の投資銀行の上司(マシュー・マコノヒーからして相当に狂っており、新入社員の主人公に勧めるのはドラッグとセックス。彼の説明によると、証券マンは顧客の望みを決して“現実化”させてはいけないそうであり、それに伴う罪悪感から逃れるためにもこういった快楽が必要になるのかもしれないなあ。

いずれにしても、この上司の教えを忠実に実行し続けた主人公は見事大成功を収め、一躍ウォール街の寵児になるのだが、どんなに大金を稼いでも、美人でセクシーな配偶者を手に入れても、結局、ドラッグやセックスと手を切ることは出来ず、バカ騒ぎはエスカレートしていくばかり。

しかし、そんな主人公の様子を、いつになくハイテンションなレオナルド・ディカプリオが面白おかしく演じているものだから、その苦しみや悲惨さみたいなものがほとんど観客に伝わってこないところが困りもの。本作を見た多くの若者は、この主人公の破天荒な生き方に憧れを抱いてしまうのではなかろうか。

ということで、俺自身は株や投資に手を出したことは一度も無いのだが、本作のラストに描かれているように、どんなに痛い目に遭っても楽な儲け話に飛び付く人々は後を絶たない。おそらく、我が国のアベノミクス神話を支えているのもそんな人達なのだと思います。