デデという娼婦

1947年作品
監督 イヴ・アレグレ 出演 シモーヌ・シニョレ、マルセル・パリエロ
(あらすじ)
ベルギーの港町にある酒場“ビッグ・ムーン”で働くデデ(シモーヌ・シニョレ)は、ヒモのマルコと一緒にフランスから流れてきた娼婦であり、酒場の主人ルネは、美人で気立ての良い彼女のことを何かと気に掛けてくれていた。ある夜、我侭な客によって街中に一人取り残されてしまった彼女は、そこで貨物船の船長であるフランチェスコ(マルセル・パリエロ)と出会い、お互いに好意を抱く….


監督のイヴ・アレグレが、当時結婚していたシモーヌ・シニョレを主演にして撮った作品。

ヒモのマルコはデデに金をたかるだけのろくでなしであり、酒場の主人であるルネは何かとデデに辛く当たる彼の振舞いを苦々しく思っていた。それに対し、フランチェスコの方はルネの古くからの知り合いであり、少々無愛想なところはあるが根は優しくて信頼できる人物。

かねてからデデの将来を案じていたルネは、彼女がフランチェスコと結ばれるよう取り計らうのだが、このルネという男がなかなか興味深い人物であり、温和そうな丸まっちい外見とは裏腹に裏社会にも相当顔が利くらしい。チンピラのマルコとは格が違うということで、二人の恋路の邪魔にならないよう、さっさと彼を追い出してしまう。

まあ、結果的には、マルコの愚かで短絡的な行動が原因となり、予想どおり二人の仲は悲恋に終わるのだが、それに続くデデの行動は予想をはるかに上回る衝撃度。デデ役を演じたシモーヌ・シニョレにとって、本作はほぼ初主演に近い作品だと思うのだが、このラストの衝撃がその後の彼女の女優としてのイメージに大きく影響したことは間違いない。

また、直接ストーリーには絡まないのだが、デデの同僚の年増の娼婦を演じたジャヌ・マルカンの存在が絶妙な隠し味になっており、彼女の健気で哀しい“優しさ”が本作の“暗さ”を見事に引き立てている。以前、「奇蹟は一度しか起こらない(1951年)」を見たときにも思ったのだが、このイヴ・アレグレという監督、なかなかの才人らしい。

ということで、例によってジュネス企画のDVDで拝見したのだが、港町が舞台のために様々な言語が飛び交う中、日本語の字幕が付くのはフランス語だけ。これはフランス語しか話せないデデと同じ環境に観客を置こうとする配慮なのかもしれないが、そのせいでフランチェスコがデデに囁くイタリア語の内容が全く理解できず、せめてここだけでも括弧付きの字幕を出して欲しかったと思います。