表銀座縦走・・・ならず(1日目)

今日は、この夏山シーズン最大のイベントである北アルプス表銀座縦走に出発する日。

この2泊3日のコースは、2年前にテント泊を始めたときからの憧れの一つだったのだが、縦走ということで、俺のような単独行の場合にはマイカーの回収が問題になる。しかし、そこは良く出来たもので、マイカー回送サービスというものが存在しており、これを利用すれば車を下山予定地である上高地の沢渡駐車場まで運んで頂けるらしい。

回送料とタクシー会社から登山口までのタクシー代金とで2万円ほど費用がかかるが、まあ、年に何度もある訳ではないので妻には大目に見てもらうこととし、午前4時頃、マイカー回送サービスでは定評のある安曇野市の南安タクシーに到着。回送の手続きを済ませてからタクシーで登山口のある中房温泉に向かう。

さて、中房温泉の駐車場は早朝だというのにほぼ満車状態であり、無理な路上駐車も目立つが、そんな中をタクシーで悠々と登山口に乗りつけるのはちょっとだけいい気分。身支度を整え、登山届けを提出してから4時49分に出発するが、心配していた天気の方は曇りがちではあるものの、当分の間、雨の心配はなさそう。

第一ベンチ〜第二ベンチ〜第三ベンチと続く合戦尾根は、北アルプス3大急登の一つらしいが、事前学習のとおり、整備が行き届いていてとても歩きやすい。次の富士見ベンチ(6時27分)でザックを下ろして休憩すると、遠くには富士山のシルエットを認めることが出来、テンションアップ。あまりスイカは好きではないので合戦小屋(6時51分)はパスさせていただき、7時36分に燕山荘に到着する。

人気の山小屋ということで、周囲は大勢の登山客で賑わっているが、何とか軒下にザックをデポさせて頂き、空身になって燕岳へ向かう。名物のイルカ岩やめがね岩を眺めながら快適な尾根道を進んでいくと、7時58分に山頂(2763m)到着。快晴には程遠い状態だが、左半分が雲に隠れた槍ヶ岳に連なる山々を一望することが出来る。

復路は団体さんを追い越すのに難渋したが、燕山荘(8時28分)まで引き返してから、本日の最終目的地である大天井岳に向かう。この間の稜線歩きが今回の縦走コースの一番の楽しみだったのだが、比較的起伏の少ないルートは期待どおりの素晴らしさであり、たまたまだったのだろうが、団体客と遭遇しなかったこともあり、イメージどおりの北アルプスの雰囲気を満喫させて頂いた。

そんな中、蛙岩(9時2分)を過ぎて大下りの頭(9時19分)に着くと、ここからは大天井岳までの稜線を一望することが出来る。まあ、結構大変そうではあるが、体力は十分に残っているので、あの美しい稜線を歩ける楽しさの方が勝っており、ザックを下ろして一休みした後、それなりに急な斜面を慎重に下りて行く。

途中、団体さんを追い越させていただくのに忙しくて、喜作レリーフの存在を確認するのを忘れてしまったが、10時37分に着いた切通分岐を左折して大天井岳の山頂を目指す。ここにも行列ができており、なかなか思うようなペースでは歩けなかったが、11時5分にようやくたどり着いた大天荘は白いガスの中。

山小屋で手続きを済ませてからテント場へ向かうが、例によって(?)俺が一番乗りらしく、場所は選び放題。白い杭が目印の特等席を選んでテントを設置するが、晴れていれば目の前に聳えているはずの槍ヶ岳も今日は全く見ることが出来ない。その上、とうとう雨まで降り出してしまったため、テントの中で横になって雨が上がるのを待つ。

1時間ほどで小止みになったので、山小屋の食堂で名物のインディアン・ランチセットを食べながら自宅にメールで経過報告。山小屋付近では電波は余裕で通じるのだが、何故かテント場では不通となってしまうため、念のため、翌朝まで連絡できなくても心配しないように伝える。

さて、ランチを食べ終わっても雨が激しくなる気配は無いので、新調したカッパの上だけを着て、大天井岳の山頂までお散歩に出掛ける。周囲はガスで真っ白ではあるが、岩場に付けられた白丸をたどっていけば迷う心配は無く、10分足らずで山頂(2922m)到着。2年前に常念岳に登ったとき、そこが常念山脈の最高峰でないことを知ってちょっぴりガッカリしたのだが、そのときの無念もようやく晴らすことが出来た。

ということで、その後、テントまで引き返すと、後は完全なフリータイム。しかし、天気は降ったり上がったりの繰り返しであり、結局、槍ヶ岳は一度も顔を見せてくれなかった。夜半からは風雨ともに強まり、少々不安な思いを胸に一晩を過ごすことになりました。