ポンヌフの恋人

1991年作品
監督 レオス・カラックス 出演 ドニ・ラヴァンジュリエット・ビノシュ
(あらすじ)
大道芸で糊口を凌いでいるホームレスの青年アレックス(ドニ・ラヴァン)のねぐらは、改修工事のために長期間閉鎖されているポンヌフ橋の上。車に片足を轢かれ、その治療のために施設で一夜を過ごした彼が橋の上に戻ってみると、そこには片目の元画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)が寝ており、失恋の痛手と失明することへの恐怖から家出をしてきたらしい彼女に、アレックスは好意を抱く….


かねてから題名だけは知っていたレオス・カラックス監督の代表作の一つ。

正直、題名からはもっとロマンチックな内容のラブストーリーを想像していたのだが、そんな甘っちょろい期待はスタート早々に木っ端微塵にされてしまい、後は、薄汚い格好をした青年の薄汚い格好をした少女に対する、せつなくていじらしい“片想い”の様子が延々と描かれる。

その薄汚い格好をした少女に関しては、空軍大佐の娘であるとか、元恋人のチェリストのことが今でも忘れられないでいる、といった情報が与えられるのに対し、薄汚い格好をした青年の方に関しては、口から火を吹く大道芸で生計を立てているらしいこと以外、個人情報は一切明らかにされない。

そのため、彼のキャラクターを十分把握できないまま、我慢して見続けていたのだが、例の橋の上での花火のシーンを見て吃驚仰天。いや、このシーンの幻想的で美しい映像は勿論素晴らしいのだが、それ以上に、このシーンをどうやって撮影したのかが全く分からずに、頭の中は疑問符の嵐。

その後、水上スキーのシーンを見て、ようやくこのポンヌフ橋が映画用のセットであるという驚愕の事実を容認せざるを得なくなる訳であるが、決して“大作”と呼べないようなこの作品において、これほど大規模なセットが作られたというのはまさに奇跡であり、(唐突なハッピーエンドを含め、全体的な完成度は決して高いとはいえないものの)もうそれだけで名作の仲間入りをすべき作品だと思う。

ということで、見終わってから調べたところによると、本作は“アレックス三部作”の完結編(?)であり、彼のキャラクターを深く理解するためには他の2作品も必見。本作の印象も変わってくるのかもしれません。