ミモザ館

1934年作品
監督 ジャック・フェデー 出演 フランソワーズ・ロゼー、ポール・ベルナール
(あらすじ)
南仏で“ミモザ”というペンションを営んでいるルイーズ(フランソワーズ・ロゼー)は、働き者の女丈夫。カジノで働いている夫ガストンとの間に子供はおらず、代わりに受刑者の息子ピエールを我が子のように育てていたが、やがてその子も出所した父親に引き取られてしまう。それから10年後、ルイーズは、パリに住むピエール(ポール・ベルナール)が病気で苦しんでいるという知らせを受け取る….


ジャック・フェデーが49歳のときに公開された彼の代表作の一つ。

ミモザ館はガストンが働いているカジノのすぐ傍に位置しており、そこの宿泊客のほとんどはカジノ賭博に興じることを目的に滞在しているらしい。おそらくピエールの父親も賭博で身を持ち崩した元宿泊客の一人であり、そんな父親に引き取られて大きくなった結果、ルイーズがパリで再会したピエールは立派なヤクザものになっていた。

まあ、そうはいっても、短い間とはいえ、我が子同然に育てたルイーズにとっては、可愛い息子であり、改めてミモザ館に連れ戻して更生させようとするのだが、そこにヤクザの情婦であったピエールの恋人ネリーが加わったことから、女同士の抗争が勃発。結局、悲劇的な結末を迎えることになってしまう。

ルイーズはものの道理をわきまえた大人の女性であり、ピエールとネリーの関係も頭では十分理解しているのだが、ピエールに対する愛情の中にはどうしても女としてのそれが混じり込んでしまうらしく、そのへんをネリーにも見透かされてしまっている。正直、このあたりの感覚は、男親の俺には理解し難いところであるが、改めて妻に確認するのもちょっと気が引けるところ。

そんな主人公のルイーズを演じているのは、公開当時43歳のフランソワーズ・ロゼー。まあ、年も年だし、体つきは大柄で、とても美人とは言いがたいのだが、どことなくフランス人らしい気品を感じさせる演技は存在感十分であり、少々作為的とも思える本作のストーリーに確かな現実味を付与している。

ということで、一応、ルイーズとピエールは実の親子同士ではないという設定なので、近親相姦的な意味合いは薄いのだが、最後のキスシーンからはちょっと背徳的な臭いがしないでもなく、その設定は問題が起きたときの単なる言い訳用に過ぎなかったような気がします。