クィンテット

1977年作品
監督 ロバート・アルトマン 出演 ポール・ニューマン、ヴィットリオ・ガスマン
(あらすじ)
雪と氷に閉ざされた未来の地球。社会との繋がりを絶ち、南方でアザラシ狩りをして暮らしていたエセックスポール・ニューマン)が、身重の妻(?)ヴィヴィアを連れて“シティ”に住む兄フランチャのもとを訪ねてくる。夕食の後、“クィンテット”というゲームを始めた兄家族等を残してエセックスは買い物に出かけるが、その隙に投げ込まれた爆弾により、ヴィヴィアを含む全員が命を落としてしまう….


ロバート・アルトマンが「ナッシュビル(1975年)」の2年後に発表したSF映画

“クィンテット”というのは、5人一組で行うボードゲームのことであり、詳しいルールの説明はないが、ゲーム中に発せられる言葉から推察すると、かなり物騒な内容のゲームらしい。何者かに妻を殺されたエセックスがその謎を探っていくと、このクィンテットというゲーム、実際の人間を駒としても行われているようであり、彼の妻もそのゲームの巻き添えになったらしいことが判ってくる。

まあ、いわゆるディストピアものの一種であり、滅び行く未来に何の希望も持てなくなった人類は、死の恐怖を身近に感じることなくして“生”を実感することが出来ない、というのが本作の基本的な世界観。このため、その世界の住人にとって死はとても身近な存在であり、死体を街中に放置しておけば数頭の黒い犬の群れが何処からともなく現れ、死体をキレイに始末してくれるのだが、この犬たちの無気力な様子がなかなか味わい深い。

もちろん無気力なのは犬だけではなく、死のゲームに参加するプレイヤーたちも同様ということで、次々と殺人が行われていくにもかかわらず、本作からはスリルやサスペンスといったものが全く伝わってこない。このあたりのアルトマンの首尾一貫した演出ぶりは、まあ、それなりに立派なのだろうが、残念なことに見ている方にとってはただ退屈なだけ。正直、これまでに見てきた彼の作品において、これほど睡魔と闘わなければならなかった経験は今回が初めてだった。

ということで、出演者の顔ぶれはなかなか豪華なのだが、公開当時の評価は芳しくなかったようであり、我が国では一般公開すらされていない。一方、変な思い込みやこだわりのようなものも見当たらないため、カルト映画にもなっていないという、まあ、とてもユニークな作品でした。