北岳(1日目)

今日は、一泊二日の予定で南アルプス北岳に出発する日。当初、土日での決行を予定していたのだが、金曜日の夜にどうしても抜けられない飲み会の予定が入ってしまい、酒気帯び運転になるのを避けるため、急遽、出発を一日遅らせた次第。

さて、俺が北岳に興味を持ったのは谷川岳に登った2年前のこと。富士山、谷川岳に続く第三の目標を検討する過程で、国内2番目の標高を持つこの山に目が止まった訳であるが、登山口まで片道5時間以上要する山に日帰りで挑戦する気にはとてもなれず、一度は断念。ようやくテント泊にも慣れた今夏の最初の目標ということで、午前4時ちょっと前に南アルプス市芦安にある市営駐車場に到着する。

おそらく出発日を遅らせたことの効果だと思うが、乗合タクシーの発着場のある第2駐車場にも数台分の空きがあり、職員の方の誘導ですんなりと駐車。車内で出発の準備を整えていると、目の前に乗合タクシーの列が出来始めたので、始発となる5時10分発のタクシー(=全部で5台あった。)に乗せていただき、登山口のある広河原へ向かう。

まあ、1,000円+利用者協力金100円の料金はかかるが、曲がりくねった狭い道を小一時間運転することを思えば安いもの。6時過ぎに着いた広河原には立派なビジターセンターが建っており、ここでトイレを済ませて6時11分に出発する。野呂川に架かった長い吊橋を渡り、すぐ先にある広河原山荘で登山届を提出すると、いよいよここから山歩きスタート。

今回の予定は、往路に最も楽そうな右俣コースを使って肩の小屋へ向かい、そこでテント泊。翌日、北岳山頂まで空身でピストンしてから、白根御池小屋コースを使って広河原まで戻るという超初心者向けコースであり、6時33分に着いた最初の分岐は、当然、二俣方向へ進む。

ところが、そこから先のルートは上り一方であり、沢を流れる水音からも次第に遠ざかってしまう。不審に思ってGPSを確認すると、何故かは分からないが、白根御池小屋コースの方を歩いていることが判明し、ビックリ仰天。引き返すのもバカらしいので、そのまま進むことにするが、久しぶりの重装備で“草スベリ”の急傾斜を上らなければならないことを考えると、ちょっと気が重い。

“あと20分で急登終わります”という親切な看板(7時20分)を通過すると、8時ちょうどに白根御池小屋に到着し、ここで一休み。正式な水場の無い右俣コース用に、飲料水はハイドレーションパックに2リットルと500mlのペットボトルを持ってきたので給水の必要はないが、小屋の水道で顔を洗わせてもらってから、いよいよ草スベリへと向かう。

まあ、傾斜自体は恐れていた程ではないものの、真夏の日差しの中、重装備+延々と続く上りはやっぱり大変。しかし、しばらくするうちに日差しがガスに遮られるようになり、気温も幾分下がってきたみたい。右俣コースとの合流点(9時35分)を過ぎると長かった急傾斜も終わりに近づき、9時50分、ようやく尾根上にある小太郎尾根分岐にたどりつく。

ここからは急登後のご褒美というべき快適な稜線歩きとなるが、遠くの山はガスに隠れてしまっているため眺めはイマイチ。今日の宿泊地である肩の小屋には、予定よりかなり早く、10時21分に着いてしまったが、素晴らしい眺望が売り物であるこの小屋からもお目当ての富士山の姿を眺めることは出来ない。

受付で500円の料金を支払い、まだ時刻が早いこともあってガラガラのテント場の一番眺めが良さそうな場所にテントを設営。小屋で購入した400円のコーラで祝杯を挙げ、インスタントラーメンの昼食を食べてもまだ正午前であり、昼寝をしようにもなかなか寝付けないということで、眺めは期待できそうにないが、とりあえず山頂まで行ってみることにする。

山頂へ向かうルートは小屋(12時8分)の裏手に続いており、まずは目の前にある最初のピークに向かって上って行くと、頂上には両俣小屋分岐の標識(12時19分)がある。その先に人だかりができていたので足を止めると、皆さん、雷鳥の親子を撮影中。3羽のヒナがとても可愛らしい。

さて、ルートはピークを右から巻くようにして続いており、岩に付けられた黄色のマークを辿っていけば問題ない。しばらく進んでいくと、次のピークの上には山名板らしき立派な標識が立っているのが認められ、あそこが目指す山頂に違いない。12時37分に着いた北岳の山頂(3193m)は大勢の登山客で賑わっていたが、案の定、眺望はイマイチだった。

13時10分にテント場まで戻ってくるが、まだ体力も残っているようなので、小屋の前に“往復30分”と表示されていた水場まで水汲みに出掛けることにする。ルートは小屋の東側の斜面に付けられた一本道を下っていくだけであるが、周囲には名前の知らないいろんな花々が咲いていて、今日、上ってきた草スベリよりずっと綺麗。

10分くらいで水場に着くと、どこからか水の流れる音が聞こえてくる。音のする場所を探していると、岩の間に差し込まれたブリキの樋の先からきれいな水が滴っているのを発見。水量が細いのでちょっと時間はかかりそうだが、他には誰もいないため遠慮は無用であり、持参したプラティパスとペットボトルをゆっくり満タンにさせていただいた。

さて、水場からテントに戻ってくると、後は完全なフリータイム。本を読んだり、音楽を聴いたり、夕飯を食べたりしていると、ようやく眠くなってきたので、シュラフにもぐり込んでそのまま就寝。