マネーボール

2011年作品
監督 ベネット・ミラー 出演 ブラッド・ピットジョナ・ヒル
(あらすじ)
2001年のシーズンでプレーオフに敗れたオークランド・アスレチックス。しかも主力選手3人が他球団に引き抜かれることが決まっており、GMビリー・ビーンブラッド・ピット)は選手の補強に奔走するが、財政難の球団に一流選手を獲得する金は用意できない。そんなとき、他球団のスタッフとして働いていたピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)と出会い、彼のデータを重視した選手評価システムに興味を抱く….


ブラッド・ピット主演による実話を基にした野球映画。

名門イェール大学の経済学部を卒業したというピーターは、スカウトの経験や直感に頼ったそれまでの選手評価を否定し、出塁率等の統計データに基づいた評価システムを主張するのだが、それが結果的に、優秀だが(他の球団の目に止まらないため)年俸の安い選手の獲得へと繋がり、2002年のシーズンでも、見事地区優勝を果たす。

まあ、こういったデータ重視の戦法には、どうしても“面白みに欠ける”、“卑怯”といった否定的なイメージが付いて回るものだが、本作の場合、それを採用しているのがアスレチックスという貧乏球団ということで、ほとんど問題になっていない。ただし、映画のクライマックスに、データ野球とは直接関係のない、むしろ偶然の積み重ねのような20連勝のシーンを持ってこざるを得なかったのは、ちょっと皮肉かなあ。

本作の脚本の優れている点は、ビリー・ビーンを単純なサクセス・ストーリーの主人公にするのではなく、様々な性格上の問題を有する生身の人間として扱っているところであり、彼がピーターの理論に興味を持ったことの背景には、(自らの体験に基づく)スカウトに対する不信感や恨みといった負の感情が存在することもしっかりと描いている。

ラストでは、ビリーの成しえた偉業を最大限評価しつつも、最後は彼の娘が優しく歌う“パパはおバカ…もっと野球を楽しんで”という歌詞で締めくくっており、これには、そんな主人公に対する映画制作者サイドからの心優しいメッセージが込められているのだろう。

ということで、本作は、実在の人物であるビリー・ビーンの光と影を見事に描いているのだが、彼に対する最終的な評価については慎重に判断を保留しており、それが爽快感の欠如等、娯楽映画としての弱点に繋がってしまっているところがちょっと残念でした。