グリニッチ・ビレッジの青春

1976年作品
監督 ポール・マザースキー 出演 レニー・ベイカー、シェリー・ウィンタース
(あらすじ)
1953年のニューヨーク。22歳になった役者志望のラリー・ラピンスキー(レニー・ベイカー)は、過保護気味の母フェイ(シェリー・ウィンタース)の反対を押し切って、グリニッチ・ビレッジのアパートで一人暮らしを始める。恋人のサラや個性的な友人たちと過ごす毎日は気楽ではあるが、確かな将来の見通しがある訳でもなく、彼の子を妊娠したサラは彼のプロポーズを断って中絶を選択する….


ポール・マザースキーが「ハリーとトント(1974年)」の2年後に発表した作品。

彼の自伝的な要素も強いようであり、邦題にもあるとおり、ユダヤ系の主人公ラリー・ラピンスキーが、美人の恋人やユニークな友人たちとともに、ときに甘く、ときにホロ苦いグリニッチ・ビレッジの青春を満喫する様子が、随所にユーモアを交えながら描かれている。

もっとも、この作品が公開された頃のグリニッチ・ビレッジは、家賃高騰の影響によって、作中で描かれているような若き芸術家たちの集う街からお洒落な商業地帯へと既に変貌をとげていたようであり、自分が青春時代を過ごした頃のグリニッチ・ビレッジに対するマザースキーのノスタルジックな思いも込められているのだろう。

また、本作のもう一つの大きなテーマにラリーの“親離れ”があり、独立後も彼のアパートにアポなしで押しかけてくる母親との間で度々精神的バトルが繰り広げられる。最初は、母親の一方的な愛情の押付けに対し、ただ怒り狂っているだけのラリー君であったが、ラストでは(諦め半分の)優しい笑顔で受け止められるようになっており、どうやら彼の親離れも無事完了したようである。

主演のレニー・ベイカーは、本作の後、TVを中心に活躍していたらしいのだが、1982年に37歳の若さでこの世を去っている。一方、母親役のシェリー・ウィンタースは、「ポセイドン・アドベンチャー(1972年)」から4年後の作品になる訳であるが、まだまだ元気一杯であり、軽快な(?)タップダンスまで披露してくれている。

ということで、原題の“NEXT STOP, GREENWICH VILLAGE”というのは、“次はグリニッチ・ビレッジ駅”という地下鉄のアナウンスのもじりであり、無事、そこを通過することが出来たラリー君が、次の目的地であるハリウッドに向かって旅立つところで映画は終わります。