12モンキーズ

1995年作品
監督 テリー・ギリアム 出演 ブルース・ウィリス、マデリーン・ストー
(あらすじ)
2035年アメリカ。全人類の99%を死滅させた謎のウィルスのワクチン開発を目指す科学者グループは、その原株を入手するため、終身犯のジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)を“事件”が発生した1996年の世界に送り込む。しかし、手違いによって1990年に送られた彼は精神病院に入れられてしまい、精神科医のキャサリン(マデリーン・ストー)は彼の話を妄想だと決め付ける….


テリー・ギリアムの監督による近未来SF映画

2035年の世界では、地表は謎のウィルスによって汚染されており、生き残った人々は地下で細々と暮らしているらしいのだが、その描写はあくまでも断片的。一方、“過去”の世界における清潔な大気や水(&キャサリン)の存在に感動を覚えたコールは、次第にキャサリンの言葉を信じるようになり、その様子を見ている観客も“2035年の世界”が現実なのか、はたまたコールの妄想なのか確信が持てなくなってくる。

まあ、展開は相当に込み入っており、見ていて決して分かり易い作品ではないのだが、逆に、そんなところが本作の悪夢のようなストーリーに微妙にマッチしているため、ほとんど欠点にはなっていない。送り込む時代を間違えるという笑うに笑えないギャグ(?)は、この後、もう一度繰り返されることになり、そのへんの(良い意味での)グダグダ感は、フィリップ・K.ディックの長編小説を思わせるところがある。

コールの脳裏に刻み込まれていた映像の意味が明らかになるラストは、哀しいバッドエンドなのだが、そのちょっと前の、キャサリンが髪をブロンドに染め上げた姿で登場する時点で、その結末をなんとなく(!)予想できるように仕組まれており、“驚き”というより、一種の“諦め”に似た感覚に包まれながら問題のシーンを観賞するという不思議な体験が味わえる。

主演のブルース・ウィリスは、まあ、いつもながらの熱演であるが、彼以外にも、テロリスト集団(?)である“12モンキーズ”のリーダー役としてブラッド・ピットが出演しており、その後の彼のある一面を予兆させるような怪演を披露してくれる。髪の色を変えることにより、精神科医から恋する女へと見事に変身するマデリーン・ストーもなかなか素敵だった。

ということで、脚本には関わっていないものの、本作におけるテリー・ギリアムは、俺のイメージどおりの彼であり、モンティ・パイソン時代を偲ばせるような独特の雰囲気もいまだ健在。次の作品を見るのがとても楽しみになりました。