ランゴ

2011年作品
監督 ゴア・ヴァービンスキー
(あらすじ)
トラックの荷台に乗せられていたペットのカメレオンが、ふとしたはずみで砂漠の中の一本道に放り出されてしまう。たまたま出会ったアルマジロの助言に従い、ようやく砂漠の中にある“土の町”にたどり着くが、深刻な水不足に喘ぐ町の住民たちの前で、ランゴという偽の名前とデタラメな武勇伝を得意げに披露した彼は、いつのまにかその町の保安官に任命されてしまう….


ジョニー・デップが主人公のカメレオンの声優を務めたCGアニメ。

時代設定はあくまでも現代なのだが、その“土の町”の雰囲気は往年のマカロニ・ウェスタンに出てくる砂漠の町にそっくり。カメレオンならではの高い状況適応能力を発揮した主人公は、自らを(ジャンゴならぬ)ランゴと名乗り、砂漠に棲む様々な小動物たちと一緒になかなか本格的な西部劇を見せてくれる。

銀行強盗の狙っているのが、黄金ではなくて水だったり、スター・ウォーズばりの空中戦まで登場するのだが、細部までリアリティに拘った映像のおかげもあって、本格西部劇らしい雰囲気はしっかり最後まで保たれている。実際、意識的に戯画化されている部分を除き、実写と見間違えてしまうようなシーンが度々あった。

まあ、CGアニメという性格上、観客の年齢層をやや低めに設定せざるを得ず、そのため、黒幕の正体等、ストーリーを少々分かり易くしすぎているきらいがあるが、逆に、「駅馬車(1939年)」をはじめ、過去の名作の見せ場を比較的自由にパクれる(?)というアニメ作品ならではの強みも遺憾なく発揮されており、全体的には大人が見ても十分楽しめる作品になっている。

主人公をカメレオンに設定したことからも解るとおり、この作品には、もう一つ、“自分探し”という相当厄介なテーマが含まれているのだが、幸い、こちらの方は過度に深刻には取り扱われておらず、正体をバラされて落ち込んだ主人公を比較的短時間で立ち直らせたのも正しい選択だったと思う。

ということで、繰り返しになるが、本作のCGのクオリティの高さは驚異的であり、ピクサー作品以外でこんなに感動したのは本作がはじめての体験。手掛けたのは、映画の特殊効果で有名なILMなのだが、Wikipediaによると同社がアニメ映画を手掛けるのは本作が初めてのことらしく、今後、どんな映像を見せてくれるのかとても楽しみです。