情婦

今日は、「午前十時の映画祭」の第三弾ということで、妻と一緒に「情婦」を見てきた。

最近、家族で映画館まで足を運びたくなるような作品がなかなか見当たらず、ちょっと困っていたのだが、1957年制作の白黒映画とはいえ、この名作ならミステリイ好き(?)の娘にもピッタリ。そう思って先日の夕食のときに恐る恐る提案してみたものの、あいにく娘からは期末試験が近いという理由であっさり却下されてしまい、結局、夫婦二人での鑑賞となった。

俺にとっては、これまでTVやビデオ、DVDで何度となく拝見させて頂いた作品であるが、妻は今回が初めてということで、タイロン・パワーのいかがわしさや、ディートリッヒによる大胆な○○○○から、最後のオチに気付かれてしまうのではないかと、ちょっとヒアヒアしながら見ていたのだが、見終わってみればそんな心配は全く無用であり、彼女もとても満足してくれた。

まあ、今さら俺がビリー・ワイルダーの脚本・演出の巧みさを指摘してみても仕方ないのだが、老弁護士と口やかましい看護師との“和解”を挿入することにより、悲劇的な結末の後味をほんのり和らげるあたりの手際の良さはまさに職人技の極みであり、妻も言うとおり、三谷幸喜とはまだまだ相当のレベルの差がありそうである。

ということで、本作でもディートリッヒの“ドイツ訛り”がトリックの重要なポイントになっているのだが、英語オンチの哀しさで、その違いが全く聞き分けられないのがとても口惜しい。俺がキューブリックの「博士の異常な愛情(1964年)」をいまいち好きになれないのも、そんなところに原因があるのかもしれません。