常念岳〜蝶ヶ岳(1日目)

今日は、念願であった北アルプスデビューを果たすため、常念岳に出発する日。

当初の予定では、26日に休暇をとり、金曜と土曜の一泊二日で出掛けるつもりだったが、どうも金曜日の天気予報が芳しくない。日曜日には晴れマークが付いているので予定を一日遅らせれば良いのだが、山歩きに限らず、これまで土日のいずれかは家族と一緒に過ごすよう心掛けてきた故、どうしようか悩んでしまう。

しかし、北アルプスの絶景はやはり良いコンディションで見たいということで、結局、土日に予定を変更させていただき、本日未明、妻に見送られて自宅を出発。東北道北関東道関越自動車道上信越自動車道〜長野自動車道と高速道路を乗り継いで、午前4時過ぎに三股駐車場に到着する。幸い、駐車場は1/3程しか埋まっていなかった。

空を見上げるときれいに星が見えており、天候は予想以上に回復しているらしい。身支度を整えていると、次第に周囲が明るくなってきたので、4時56分に駐車場を出発し、車止めのゲートを越えて林道を歩いていく。まだ人影のない登山指導所(5時11分)のポストに記載済みの登山届を投入し、鉄製の橋を渡るとすぐに分岐(5時12分)があり、ここを“7.1km”の表示がある常念岳に向かって右に入る。

最初の2時間は樹林帯の上りというのは事前学習のとおりであり、先のことを考えて意識的にゆっくり上がっていく。先程提出した登山届には常念小屋泊と書いておいたが、もし、常念岳に10時までにたどりつければ、一気に蝶ヶ岳ヒュッテまで歩いてしまうつもりであり、そうなると先はまだ長い。

迂回路(5時30分)〜“常念岳5.2km”の表示(6時28分)を過ぎ、7時16分にようやく尾根に出ると、そこには“常念岳4.1km”の表示があった。この先しばらくは平坦な道が続き、支柱の跡(7時25分)らしきところからは前常念の姿がよく見える。その後、傾斜は再びキツくなってくるが、木々の間からは蝶ヶ岳〜蝶槍らしき稜線を眺めることが出来た。

7時59分に木製の小さなハシゴを上ると視界が一気に広がり、ここから前常念への岩上りが始まる。ダブルストックをザックに収納し、両手両足を使って上っていくのだが、背中の重いザックのために思うようなスピードが出ない。これではマズイと少々焦り気味になったとき、目の前に雷鳥が歩いているのを発見(8時43分)。

実は、しばらく前から周囲のガスが濃くなってきており、先程まで見えていた蝶ヶ岳への稜線がほとんど見えなくなっていることも俺の焦りの原因だったのだが、まあ、そんな天候だからこそ雷鳥に出会えたのだと思い直すことにし、雷鳥の後を追うように再びゆっくりしたペースで岩場を上っていく。

途中、別の雷鳥のつがいを見かけた後、ようやく避難小屋(9時00分)に到着。そのすぐ先に三角点の表示(9時3分)があったが、ここが前常念のピークなんだろうか。傾斜は緩くなったものの、岩だらけの稜線はちょっと歩き辛く、今は廃道になった常念小屋への分岐(9時20分)を過ぎたところで小休止。これでは10時までに常念岳に着くのは難しそうと思いながら、自宅に途中経過をメールする。

山頂のすぐ下にある常念小屋分岐に到着したのは10時9分のこと。常念小屋に直行するならここを右手に下っていくが、山頂の西側には一部青空が覗いており、蝶ヶ岳ヒュッテまで行きたい気持ちがまだ10%くらい残っていたこともあって、とりあえず山頂を目指すことにし、10時19分、遂に常念岳の山頂(2,857m)に到着する。

着いたときにはまだ見えていた穂高連峰もすぐに雲に隠れてしまい、蝶ヶ岳へ向かう稜線もみるみるうちに真っ白なガスの中へ。それを見て蝶ヶ岳ヒュッテ行きをここで正式に断念し、自宅にも常念小屋に泊まる旨をメールする。このとき山頂に居たのはいずれも一の沢からのピストンの方ばかりだったが、9時前に常念小屋を通過した頃には槍穂が良く見えたと話してくれた。

さて、しばらく休憩していたが、ガスの晴れる様子は全くないということで、常念小屋へ下りることにする。先程通ってきた前常念への分岐(10時45分)の先に長い下り坂が続いているが、石だらけの斜面は落石を起こしそうでなかなかペースが上がらない。ガスのために小屋を視認することも出来ず、そんな中を人の話し声のする方向へと下りていくと、11時31分に常念小屋に着いた。

テント料600円(トイレチップ込み)を支払ってからテント場に行くと、既に7、8張のテントが設置されており、どうやらテント場にあるトイレから離れた方から順に埋っていくらしい。無理をすれば既に設置されたテントの間に張ることも可能であるが、まあ、ここはおとなしく比較的トイレに近いほうの傾斜が少ないところを見つけてマイテントを設置した。

まだ正午になったばかりであるが、周囲はガスで真っ白であり、何もすることがないのでテントの中で昼寝をしていると、大勢のざわめく声で目が覚める。何事かと思って外へ出てみると、一時的にガスが晴れたようであり、眼前に聳え立つ常念岳雄大な姿が目に飛び込んでくる。慌てて1、2枚カメラのシャッターを切ったが、そうこうするうちに辺りは再びガスに包まれてしまった。

ということで、それからは本を読んだり、小屋で買ってきた水(=2リットルで400円)で作ったちょっと早い夕飯を食べたりしてから早々と就寝。目覚ましのアラームは午前3時に設定しました。