シンデレラ・リバティ

1973年作品
監督 マーク・ライデル 出演 ジェームズ・カーン、マーシャ・メイソン
(あらすじ)
アメリカ海軍の甲板長ジョン・バッグス(ジェームズ・カーン)は、病院での検査結果が出るまでの間、しばらく船を下りることになる。手持無沙汰な彼は、たまたま立ち寄った酒場で客と賭けビリヤードに興じていたマギー(マーシャ・メイソン)という女性に興味を持つが、その夜訪れた彼女のアパートの一室では、11歳になる彼女の息子ダグが一人で母親の帰りを待っていた….


ジェームズ・カーンが「ゴッドファーザー(1972年)」の翌年に主演した作品。

要するに、マギーというのは水兵相手に春をひさぐ売春婦であり、バッグスも最初は一夜の快楽だけのために彼女に声をかけたのだと思うのだが、黒人とのハーフであるダグ少年の悲惨な暮らしぶりを見て、この母子を放っておくことができなくなってしまう。

まあ、同じ売春婦といっても、本作のマギーは、ジュリア・ロバーツが「プリティ・ウーマン(1990年)」で演じていたヒロインとは大違いの30過ぎの中年(?)女であり、ロマンチックという言葉からはかなり縁遠い存在。また、その息子のダグも、酷い虫歯のために口を開けて笑うことが出来ないという無愛想な不良少年であり、どう見ても父性本能をくすぐるようなタイプとは思えない。

そんな、普通であればあまりお近づきになりたくないような母子の生活を立て直すために、上官の反対を押し切ってマギーと結婚するという主人公の行動はなかなか感動的ではあるものの、正直、そうまでしてこの母子を救おうとする彼の気持ちが上手く理解出来ないため、ストーリー自体にやや無理があるような印象を抱いてしまった。

主演のジェームズ・カーンは、「ゴッドファーザー(1972年)」のときとは全く異なった“善人”役を精一杯地味〜な感じで演じているのだが、この母子のために自分の将来を諦めるっていう役柄にはまだまだ若々し過ぎるように思われ、むしろ主人公の友人役で出演していたイーライ・ウォラックを主役に据えた方がもっと説得力が出たと思う。

ということで、そんな男優陣を完全に喰ってしまったマギー役のマーシャ・メイソンによる生活感に溢れた体当たりの演技は誠に素晴らしく、このおとぎ話にそれなりのリアリティを持たせることが出来たのも彼女のお陰だと思います。