好奇心

1971年作品
監督 ルイ・マル 出演 ブルノワ・フェルレー、レア・マッセリ
(あらすじ)
1954年のパリ。もうすぐ15歳になるローラン(ブルノワ・フェルレー)は、両親と二人の兄との五人家族。ちょっと気難しいところのある婦人科医の父親との関係はあまり良好とは言えないものの、若くて美人の母親クララ(レア・マッセリ)にとって彼は三人の兄弟の中で一番のお気に入りであり、彼もそんな母親が大好きだった。そんなある日、彼は家から出てきたクララが見知らぬ男の車に乗り込むところを目撃する….


ルイ・マルが少年の性の芽生えをユーモラスに描いた佳品。

ローラン少年は、日本なら中学生といった年頃にもかかわらず、チャーリー・パーカーディジー・ガレスピーといったモダンジャズのレコードを聴きながら、ハードボイルド小説から古典的ポルノ小説まで読破するという、ちょっと大人びたところのある男の子。

まあ、このへんは、彼自身が優秀なことに加え、ちょっとイカれた二人の兄による熱心な教育(?)の影響が大きいのだろうが、その反面、典型的な“お母さんっ子”でもあり、母親のクララにまとわりつく様子はどうみても小学生並み。先日拝見した「花のようなエレ(1971年)」の主人公にもそういった傾向が見られたのだが、フランスの中高生には反抗期といったものが無いんだろうか。

本作は、母親の浮気というちょっとショッキングな出来事を背景に、そんなローラン少年の日常に関する様々なエピソードが自由な雰囲気の中で描かれている。まあ、個々のエピソードには、最後の方で出てくる特大の一つを除き、他愛のないものが多いのだが、何事にもへこたれない彼の性格が幸いして、なかなか面白く見ていられる。

また、レア・マッセリ扮する母親クララのキャラクターが秀逸であり、自分の家庭生活を大切にしながら、自由な恋愛を楽しむという割り切った考え方は、彼女がイタリア人だからなのだろうか。正直、日本的な理想の母親像からはかなり隔たった存在なのだが、本作が無事ハッピーエンドを迎えられたのも彼女の功績によるところが大きいと言わざるを得ない。

ということで、字幕に“仏印”という文字が何度か出てくるのだが、後で調べたところ、これはフランスの植民地であった仏領インドシナのこと。1954年のディエンビエンフーの戦いで大敗を喫したフランスは、同年のジュネーヴ協定によってインドシナ3国(=ベトナムカンボジアラオス)の独立を正式に承認したのだそうです。