ブラディ・サンデー

2002年作品
監督 ポール・グリーングラス 出演 ジェームズ・ネスビット、デクラン・ダディ
(あらすじ)
1972年1月30日の日曜日。北アイルランドのデリーでは、カトリック系住民に対する不当な“インターンメント”に抗議するため、下院議員のアイバン・クーパー(ジェームズ・ネスビット)等をリーダーとした大規模なデモ行進が予定されており、参加者の中には17歳のジェリー(デクラン・ダディ)の顔もあった。一方、度重なる暴動の鎮圧に手を焼いていた英国軍は、このデモの警備に強硬姿勢で臨むことを表明する….


ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたポール・グリーングラス出世作

1972年に北アイルランドのデリーで起きた“血の日曜日事件”をテーマにしており、“インターンメント”というのは、治安当局が不穏分子を裁判なしに長期間監禁できるというシステムのこと。実際は、もっぱら少数派であるカトリック系住民の抗議行動を弾圧するために使用されていたらしい。

徹底したドキュメンタリータッチで描かれているのだが、説明的なシーンを極力排するとともに、ハンディカメラによる臨場感に溢れた映像を無造作につなぎ合わせたかのような(当時としては)特異な演出方法を採用することによって、この30年前に起きた事件を見事に“再現”することに成功している。

もちろん、この映像自体は作り物であり、制作されたのが2010年にキャメロン首相が政府側の非を正式に認めるよりも前ということで、公開当時は本作のシナリオに対しても様々な異論があったものと推察されるが、デモに参加した学生たちの認識の甘さや警備に当たる兵士たちの積もりに積もったフラストレーションなんかが見ている方にヒシヒシと伝わってくるため、説得力はもう十分過ぎるくらい。チラっとではあるが、IRAがこの事件に関与した可能性を示唆するシーンもきちんと描かれていた。

なお、本作のエンドロールでは、この事件をテーマにしたU2の「Sunday Bloody Sunday」が流れるのだが、俺がこの事件を知るきっかけになったのはジョン・レノンの「血まみれの日曜日」という曲(=原題は、こちらも「Sunday Bloody Sunday」)の方であり、彼が1972年に発表した「サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ」というアルバムに収められていた。

ということで、本作が制作された英国では誰でも知っている大事件ということで、このようなナレーションも説明セリフも一切なしという演出が可能になったのだろうが、我々異邦人が鑑賞するに当たっては、アイルランド紛争に関する一通りの予備知識が必要になると思います。