オリバー・ツイスト

1948年作品
監督 デヴィッド・リーン 出演 ジョン・ハワード・デイヴィス、アレック・ギネス
(あらすじ)
劣悪な環境の救貧院で他の孤児たちと一緒に暮らしていたオリバー(ジョン・ハワード・デイヴィス)は、ある日、仲間を代表して恐る恐る夕食のおかわりを申し出たところ、それが原因で問題児だと目を付けられてしまう。その後、葬儀屋に働きに出された彼は、同僚のいじめに我慢できずに一人ロンドンへと逃げ出すが、そこでひょんなことからフェイギン(アレック・ギネス)率いる窃盗団の仲間に入ることに….


ディケンズの古典的名作を名匠デヴィッド・リーンが映画化した作品。

嵐の晩、たった一人で救貧院にたどりついた身重の若い女性がオリバーの母親であり、彼を産んで間もなく息を引き取ってしまう。彼女は高価なペンダントを身に着けており、後日、それによってオリバーの身元が判明することになるのだが、彼女の最期を看取った老女がそれを盗んでしまったため、彼は救貧院で孤児として育てられることになる。

冒頭、この救貧院や葬儀屋でのオリバーの生活が描かれる訳であるが、意地悪の教区吏バンブルや気の弱い葬儀屋のサワベリーといった脇役たちがなかなか良い味を出しており、デヴィッド・リーンのドラマチックな演出のせいもあって、その悲惨な内容にもかかわらず、大変面白く見ていられる。

舞台がロンドンに移ると、今度はいかにも狡猾そうなフェイギンと彼の率いる少年窃盗団が登場し、依然として快調なペースでストーリーは展開していくのだが、彼の悪党仲間であるビル・サイクスやモンクスが登場するあたりから何故か調子がおかしくなり、見ていて話が上手く繋がらなくなってくる。

特にモンクスという人物に関する情報が決定的に不足しており、彼がオリバーに興味を抱くようになった経緯やオリバーの祖父であるブラウンロー氏との関係なんかが全く理解できないため、それが気になってストーリーに集中できない。後半もビルが情婦のナンシーを撲殺するシーンなど見どころは満載なだけに、これは大変もったいない話であり、上映時間をあと30分くらい長くして脚本をきちんと整理していたら、おそらく相当の名作になっていたことと思う。

ということで、後の名優アレック・ギネスが悪役のフェイギンを巧みに演じているのだが、ユダヤ人ということを強調するため、大きな付け鼻を付けて演技していたのが時代を感じさせます。