甦る熱球

1949年作品
監督 サム・ウッド 出演 ジェームズ・スチュワートジューン・アリソン
(あらすじ)
テキサスの片田舎にある小さな農場を母親と二人で営んでいるモンティ・ストラットン(ジェームズ・スチュワート)は、地元の草野球チームのエース・ピッチャー。彼の投球を見かけた浮浪者のバーニーは、かつて大リーグの名捕手として鳴らした経験から彼の卓越した素質を見抜き、農場に住み込んで一緒にトレーニングを積んだ後、ホワイトソックスの入団テストを受けるため、二人してキャンプ地のカリフォルニアに向かう….


実在の大リーガーであるモンティ・ストラットンの伝記映画。

昔、TVで放映されたのを一、二度見たことがある作品なのだが、細かなところはすっかり忘れており、全体の3分の2くらいは新鮮な感覚で楽しむことが出来た。エセル(ジューン・アリソン)と結婚してまだ間もない頃のモンティが、雑誌の取材と偽って頻繁に帰宅時間を遅らせるというエピソードにも、まさかと思いながら結構ハラハラさせられてしまった。

事故で片足を失った主人公が、妻の励ましを受けてカムバックするという後半の展開は記憶していたとおりだったが、あのハッピーエンドにはちょっと出来過ぎの感が残る。そこで、実際の経歴を調べてみたのだが、彼がホワイトソックスに所属していたのは1934年から1938年までの5年間(通算成績は36勝23敗)で、絶頂期にあった1938年11月に狩猟中の事故が原因で片足を切断することになったのは、ほぼ映画と同じ。

しかし、再起するまでにはやはり相当の時間を要したようであり、1941年からの2年間をホワイトソックスでバッティングピッチャー等として過ごし、セミプロのチームで敵のバント攻撃に苦しみながら実績を積んだ後、テキサス州東部リーグで本格的にカムバックを果たしたのは、事故から8年後の1946年のことだったらしい。

1939年に彼のためにシカゴカブスとのチャリティ試合が開催されたという記録があるので、映画のクライマックスシーンはこのときの様子を描いているのかもしれないが、実際の試合では、投げるときの体重移動がこのときはまだ上手くいかず、満足な投球は出来なかったようである。

ということで、まあ、この程度の脚色はハリウッド映画では当たり前。1949年9月に亡くなったサム・ウッドにとってはほとんど遺作のような作品なのだが、ジェームズ・スチュワートジューン・アリソンの名コンビにフランク・モーガン、アグネス・ムーアヘッドといった芸達者な脇役を配し、心温まる佳作に仕上げているのは流石です。