ぐるりのこと。

2008年作品
監督 橋口亮輔 出演 木村多江リリー・フランキー
(あらすじ)
小さな出版社に勤める翔子(木村多江)は、妊娠したことを機に同じ美大に通っていたカナオ(リリー・フランキー)と結婚。真面目で几帳面な翔子に対し、カナオは浮気性で優柔不断な性格であったが、先輩から紹介された法廷画家の仕事に精を出し、二人はそれなりに幸せな日々を送っていた。そんなある日、生まれたばかりの子どもが亡くなってしまい、そのショックから立ち直れない翔子は次第に鬱状態になっていく….


最近、活躍の目立つ木村多江の初主演映画。

結婚してから10年間に及ぶ夫婦の生活を描いている訳であるが、前半では子供を亡くしてどんどん落ち込んでいく妻とそれを静かに見守る夫の様子が淡々と映し出される。そして、それから数年が経過したある夜、妻がそれまで溜め込んできた感情を一気に爆発させ、夫がそれを優しく受け止めることにより、妻の鬱状態は一転改善へと向かう。

おそらくこの夜のシーンが本作の一つのクライマックスになるのだろうが、これが意外にフツーであり、ホッとしたというよりも、こんなことで済むのならもっと早くに何とかならなかったのかという印象の方が強い。まあ、俺がこの夫婦の繊細な内面を理解できないだけなのかもしれないが、その後、妻が再び絵に熱中することによってかつての明るさを取り戻して行くという展開も、ちょっと類型的すぎると思う。

また、夫の仕事が法廷画家ということで、連続幼女誘拐殺人事件や地下鉄毒ガス事件といった実際に起きた大事件をモチーフにしたような事件の裁判シーンが繰り返し登場するのだが、それがメインのストーリーと絡むようなことは一切無く、単なる添え物以上のものにはなっていない。

特に、このシーンに被告や裁判官、傍聴人等として登場する俳優の演技には、何故かとってつけたような低レベルのものが多く、安っぽいセットのせいもあってまるでTVの再現ドラマを見せられているような印象を受けた。

ということで、主演の木村多江は鼻水まで垂らしての大熱演を見せてくれるのだが、その相手役が素人同然のリリー・フランキーで良かったのかという点についても、個人的にはかなり疑問。浮気性という設定は全く活かされていないし、何か飄々としすぎていて物足りなさを感じてしまいます。