お堂でみる阿修羅

たまたま関西に行く用事があったので、空き時間を使って奈良の興福寺で開催中の「お堂でみる阿修羅」を見に行って来た。春先に東京国立博物館で開かれていた「国宝 阿修羅展」を家族で見に行く計画が諸般の都合によって実現しなかったので、これがちょうど良いリベンジになった。

近鉄奈良駅を出発し、近道をしようと思いながら歩いて行くと、興福寺の北円堂のところに出たのだが、そこには既に長蛇の列が出来ている。約1時間待ちということで、その列に並びながらパンフレットを眺めていると、今回の展示会は2か所の会場に分かれて開催されており、阿修羅像が展示されているのは別の会場の方であることが判明。しかし、時間は十分取ってあるので、そのまま列に並ぶこと1時間足らずで北円堂の中に入ることが出来た。

こちらには、運慶作の弥勒如来坐像や無著・世親菩薩立像などが展示されており、特に学校の教科書で見覚えがある後者の2体の木造彫刻は、通常の意味では決して美しくないのだが、海外の彫刻には見ることが出来ないその高い精神性はとても印象的。また、会場となっている北円堂自体も鎌倉時代に再建されたという国宝の建物であり、ここに入れただけでも満足度は高い。

お目当ての阿修羅像が展示されているのは仮金堂というところであり、こちらは中が広いこともあって行列に並ぶこともなく建物の中に入ることが出来た。中はさすがに混んでいたのだが、釈迦三尊像、四天王像、十大弟子八部衆像の計21体の仏像がずらりと並んでいる様子はなかなか壮観であった。

ということで、阿修羅像はその中央に展示されていたのだが、3mを優に超える釈迦三尊像の前ではその華奢な身体つきが一層強調されていて、なんか痛々しいような感じさえ受けた。まあ、俺の場合、萩尾望都の「百億の昼と千億の夜」のヒロインである阿修羅王の影響も多分にあるとは思いますが。