情熱の狂想曲

1949年作品
監督 マイケル・カーティス 出演 カーク・ダグラスローレン・バコール
(あらすじ)
幼い頃に両親を失ったリック(カーク・ダグラス)は、心やさしい黒人ジャズマンの手ほどきを受けて実力派の若手トランペッターへと成長していく。自分の音楽スタイルにこだわる彼は、一時期不遇にみまわれるものの、ニューヨークでその実力を認められ、若くして有名ビッグバンドの花形としての地位を築く。そんなとき、彼は女友達の紹介で精神分析医の卵というアミー(ローレン・バコール)と知り合いになる….


前日に引き続きマイケル・カーティスの監督作品を鑑賞。

1920年代に活躍した天才コルネット奏者のビックス・バイダーベックをモデルにした作品らしいのだが、彼について俺が知っているのはサッチモと肩を並べる程の天才コルネット奏者だったということくらいであり、これまで彼の演奏を聴いたことはないし、その生涯についても全く知らなかった。

しかし、あのカーク・ダグラスがジャズマンを演じるとなれば、もう、最後に悲劇的な結末が待っているのは火を見るよりも明らかであり、本作で彼の転落の切っ掛けとなるのは精神分析医の卵という美女アミーの存在。彼女は自らを“インテリな山羊”と評するように、自分に無い才能に憧れては挫折を繰り返すという人間であり、結局、精神分析医になるための試験にも失敗してしまう。

まあ、一言でいえば金持ちのバカ娘ということになるんだろうが、演じているのが「キー・ラーゴ(1948年)」とほぼ同時期のローレン・バコールということで、純情なリックが彼女にメロメロになるのもやむを得ないところ。決して出番は多くないものの、その独特の雰囲気で強烈な印象を残しているのは流石であり、むしろ彼女を主人公にした方が面白かったんじゃないかなあ。

また、もう一人のヒロインとしてドリス・デイも出演しているのだが、彼女の方はリックがトランペットと“結婚”していることを理解しているため、二人の仲は友人以上の関係には進展しない。作中でお得意の歌も数曲披露してくれるのだが、そのシチュエーションがあまりストーリーに絡まないため、少々印象が薄いのが残念だった。

ということで、本作におけるマイケル・カーティスの演出はこれまで見た彼のどの作品とも異なった印象であり、まあ、要するにこれが彼らしいということなんだろう。特に、アミーと別れたリックがニューヨークの街を一人彷徨うシーンは、ジャズを題材にした映画らしく都会的な感覚に溢れており、とても「コマンチェロ(1961年)」と同じ監督が撮ったとは思えない仕上がりになっています。