復讐は俺に任せろ

1953年作品
監督 フリッツ・ラング 出演 グレン・フォード、グロリア・グラハム
(あらすじ)
警察官のダンカンが拳銃自殺をし、第一発見者である彼の妻は夫が健康上の問題で悩んでいたと証言する。しかし、自殺の動機に納得のいかない警部のデイヴ・バニオン(グレン・フォード)は、ダンカンの愛人だったというバーの女ルーシーから“3日前に彼に会ったが元気だった”という話を聞き、自殺の背後になんらかの犯罪が存在することを確信するが….


フリッツ・ラングが「無頼の谷(1952年)」の翌年に公開した作品。

ダンカンはラガーナという街の黒幕と警察上層部との癒着を告発する遺書を残しており、彼の妻はその遺書をネタにしてラガーナから金を強請り取ろうとしている。ラガーナの手下にはヴィンス(リー・マーヴィン)というギャングもいるのだが、彼女は自分が死ぬとその遺書がマスコミに渡るよう手筈しているため、誰も彼女に手を出すことができないっていう訳。

この事件の捜査に当たるバニオン警部は、とても職務熱心な半面、一旦仕事を離れると優しい妻や幼い娘をとても大切にする家庭人として描かれており、そんな彼の人柄がルーシーや自動車修理工場の老秘書といった周囲の女性を惹きつけ、彼女たちの協力で事件の核心へと近付いて行く。

しかし、そんな女性たちの中で最後の最後に事件の解決に大きな貢献をするのは、それまで単なる脇役の一人だとばかり思っていたヴィンスの情婦デビー(グロリア・グラハム)であり、この予想外の展開には見ていて吃驚仰天。“殺されたらマスコミにバラす”っていうシチュエーション自体は珍しくもないが、それを逆手にとったこんな解決法というのは初めて拝見させて頂きました。

主演のグレン・フォードは、彼の後年の大きな魅力となる“好人物らしさ”を滲ませたような演技を見せており、なかなか興味深い。これに対しては中途半端という批判もあるだろうが、この役柄からすれば仕方のないところであり、その責任はフリッツ・ラングが負うべきなんだろう。

ということで、アメリカに来てから約20年経ったラング監督であるが、相変わらずハリウッド的なスマートな感覚が身に付いていないなあ。本作でも各エピソードの雰囲気が統一されておらず、見ていてどこか違和感があるんだけれど、それにもかかわらず、何故かその不器用さ(?)が味わい深いという全くもって不思議な監督さんです。