真昼の暴動

1947年作品
監督 ジュールス・ダッシン 出演 バート・ランカスター、ヒューム・クローニン
(あらすじ)
ウェストゲイト刑務所に服役中のジョー(バート・ランカスター)は、重い病に冒されている恋人の病状が気になるものの、刑務所は野心家で冷血漢の看守長マンジー(ヒューム・クローニン)によって牛耳られており、通常の方法ではとても釈放は期待できないような有様。追い詰められた彼は、囚人達のリーダー的存在であるギャラガーを誘って大がかりな脱獄計画を実行しようとするが….


ジュールス・ダッシンの監督によるバイオレンス作品。

看守長のマンジーは、小柄でおとなしそうな外見からは想像もつかないような残忍な性格の持ち主であり、スパイ(=別の囚人)を使って釈放が間近い囚人の問題行動を徹底的に調べ上げ、その釈放を取り消させてしまうような人物。また、自ら囚人を直接拷問にかけることも厭わない。

もう、このキャラクターが本作の方向性を決定してしまったようなものであり、殺伐とした雰囲気に包まれた刑務所内ではリンチや虐待といった“暴力”が満ち溢れている。この手の作品のお約束として、本作にも囚人に同情的な医師というキャラが登場するんだけれど、マンジー看守長は何とこの医師のことも殴り倒してしまうんだよねえ。

そんな彼の“狂気”が引き金となって起きた脱獄ということで、ジョーの計画は大胆というより、むしろ無謀。まあ、このへんはダッシン監督や脚本のリチャード・ブルックスが意識的にやっているのかもしれないのだが、話の運びがちょっと粗すぎるため、確かに迫力はあるものの相当リアリティに乏しい。

また、途中に囚人達が逮捕されたときのシーンが何度かフラッシュバック的に挿入されるんだけど、これがそれ程面白いエピソードがある訳でもなく、単にそれまで高まってきた緊迫感を台無しにしてしまっているだけ。やっぱり、常人にはなかなか理解し難い“狂気”を描くからには、もうちょっときめ細やかな配慮が必要だったんじゃないだろうか。

ということで、本作が主演2作目となるバート・ランカスターはキャリア不足が否めず、まだ演技に余裕がないっていう感じかなあ。デビューが遅かったせいで年齢は公開当時34歳なんだけど、ギャラガー役のチャールズ・ビックフォードに完全に貫禄負けしており、まあ、そんなところがなかなか可愛らしかったです。