汚名

1946年作品
監督 アルフレッド・ヒッチコック 出演 ケイリー・グラントイングリッド・バーグマン
(あらすじ)
父親がナチスのスパイとして有罪判決を受けたことにより、自暴自棄となったアリシアイングリッド・バーグマン)は酒浸りの日々を送っていた。そんなある晩のパーティで、彼女はデブリン(ケイリー・グラント)という男と知り合いになるが、実は彼はアメリカ連邦警察の一員であり、ブラジルへ逃れたナチ残党の動きを探るため彼女に協力して欲しいと申し出る….


アルフレッド・ヒッチコック監督のサスペンス映画。

まあ、天下の二枚目、ケイリー・グラントからのお願いを断れる筈もなく、アリシアは“にわかスパイ”の役を引き受け、リオ・デ・ジャネイロに住む父親の旧友セバスチャン(クロード・レインズ)に接近。一方、昔からアリシアに気があったセバスチャンは大喜びで彼女にプロポーズまでしてしまう訳であり、ここからヒッチコック一流のロマンチック・サスペンス劇が展開する。

実を言うと、俺はあまり忠実なヒッチコック・ファンではなくて、世評の高い「裏窓(1954年)」や「めまい(1958年)」なんかはいま一つピンとこないんだけど、幸いなことに本作はとても面白かった。パーティ会場におけるシャンパンの消費量を描くことでこれだけサスペンスを盛り上げてしまうあたりは、ヒッチコックの面目躍如たるところだろう。

また、重要なポイントでは余分なセリフを極力省き、俳優の演技とカメラワークだけでその場の状況を過不足無く観客に伝えてしまうという演出も素晴らしく、そこから生まれてくるスピード感やテンポの良さは見ていてとても心地よい。やっぱりヒッチコック映画は白黒作品に限る(=「フレンジー(1972年)」は例外)ということを再認識させていただいた。

ということで、主演のイングリッド・バーグマンは、必ずしもヒッチコック作品に出演することを望んでいなかったというような話を聞いたことがあるが、そんな情報が信じられないくらいに本作は良く出来ている。次は、彼女が初めて彼の作品に出演した「白い恐怖(1945年)」を(もう一度?)見てみようと思います。