モンパルナスの灯

1958年作品
監督 ジャック・ベッケル 出演 ジェラール・フィリップ、アヌーク・エーメ
(あらすじ)
売れない画家のモディリアーニジェラール・フィリップ)は、自分の作品が大衆に理解してもらえないという虚しさを抱えながら、貧困と酒浸りの日々を送っていた。そんなある日、彼は美しい画学生のジャンヌ(アヌーク・エーメ)と街で出会い、二人は急速に愛し合うようになる….


先日のフェルメールに続き、今回はモディリアーニの伝記映画を鑑賞。

伝記映画とはいっても、演じているのがジェラール・フィリップということで、本作のモディリアーニはとってもカッコいい。金はないし、酒浸りだし、病弱だし、おまけに女性に暴力を振るうような男なんだけど、女性にはやたらとモテるようであり、次々と女を乗り換えながら毎日の酒にありつくといった生活を送っている。

ジャンヌとの運命的な出会いも、実は別の場所で彼に一目惚れした彼女がわざと仕組んだものらしく、誠に羨ましいばかり。モディリアーニとの初めての夜を過ごした翌朝、テキパキと身支度を整えた彼女が“家に帰って両親から結婚の許しをもらってくる”と言い残して一人で部屋を出ていくシーンは、彼女の知的であると同時に情熱的という性格を良く表した名シーンです。

まあ、昨日「Gガール 破壊的な彼女(2006年)」を見たばかりというせいかもしれないけど、このジェラール・フィリップとアヌーク・エーメという主役の二人をはじめ、本作の出演者は端役に至るまでみんなそれぞれに個性的で魅力十分。特に、“モディリアーニの絵は、彼が生きている間は売れない”と言い切る冷酷な画商モレルを演じているリノ・ヴァンチュラは、出番は少ないもののとても印象的な演技を見せてくれる。

実際には、モディリアーニの死の2日後にジャンヌも後を追って自殺しているらしいんだけど、本作はこの悲劇的なエピソードを敢えて使用せず、モディリアーニの死をまだ知らないジャンヌからモレルが大量に絵を買いあさるというシーンをラストにもってきており、これが美術界におけるある種の“不健康さ”(=これが彼の死の遠因にもなっている訳だが。)を見事に描き出している点も興味深かった。

ということで、伝記映画の割にはモディリアーニの創作活動の背景や苦悩みたいな点にあまり触れられていないのがちょっと期待外れではあるが、美男美女の悲恋物語ということでは文句なしに素晴らしい作品であり、良質のフランス映画の魅力を十分堪能させていただきました。