2007年作品
監督 平山秀幸 出演 国分太一、香里奈
(あらすじ)
今昔亭三つ葉(国分太一)は古典一筋の売れない落語家。二ツ目になってから数年経つものの、生来の生真面目さが災いしてかここのところ伸び悩み気味。そんな彼のところへ関西から転校してきた小学生に落語を教えて欲しいという依頼が舞い込み、それがきっかけとなって美人だが無愛想な十河五月(香里奈)等を相手に「話し方教室」を開くハメになる….
ヒロインの十河五月は発達障害(=たぶんアスペルガー障害)なんだと思って見ていたんだけど、違うのかなあ。一度聞いただけで大ネタの「火焔太鼓」を難なく覚えてしまうという特異な能力もそのせいだろうと勝手に解釈していたんだけど、最後まで彼女の障害に関する説明は無かったし、ラストでは屈託のない笑顔を見せてくれるのでちょっと不安。
まあ、それは一先ず置いといて・・・
本作は“伸び悩んでいた落語家が、様々な問題を抱えた素人を相手に落語を教えていく過程を通して自らも成長する”っていうお話しなんだと思うけど、作る方ではそういったベタな“お話し”にはしたくなかったのか、本来なら最後の山場になるべき三つ葉の「火焔太鼓」を前に持ってきて、生徒達の「発表会」のほうをラストに取り上げている。
そのため、三つ葉の「火焔太鼓」成功の直接の理由が“酒の勢い”になってしまっているんだけど、うーん、本当にこれで良かったんだろうか。ここはやっぱりこの手の作品の王道らしく、村林少年や五月の必死に落語に取り組んでいる姿が三つ葉の心を打ち、それが契機となって彼の落語が変わっていくっていう展開の方が見ていて素直に感動できたように思うんだけど、それって俺がハリウッド映画に毒されているせい?
実は、伊東四朗が落語家役をどう演じているのかが見たくて本作を鑑賞した訳であるが、本作の最大の功労者は村林少年に扮する森永悠希の方でしょう。10歳という年齢にもかかわらず、コメディリリーフを一手に引き受け、見事にその重責を果たしているのは大したもの。彼の演じる「まんじゅうこわい」の面白さが枝雀を知らない世代にもちゃんと伝わったかどうかは分らないけど、個人的にはとても楽しませて頂いた。
ということで、やっぱり香里奈級の美人が何の理由もなしに“無愛想”というのは、俺には相当の違和感がある。まあ、そうはいっても東京の下町を舞台にした本作の雰囲気はとても好ましく、この雰囲気を醸し出すためにストーリーのメリハリや演出のテンポを敢えて犠牲にしたのだとすれば、まあ、それはそれで仕方ないのかなあ。