宗方姉妹

1950年作品
監督 小津安二郎 出演 田中絹代高峰秀子
(あらすじ)
節子(田中絹代)は生活費を稼ぐために銀座でバーを経営しているが、失業中の夫亮助は彼女の苦労を一向に理解しようとしない。節子の妹の満里子(高峰秀子)はそんな姉夫婦の関係が理解できず、姉を「古すぎる」と批判するが、その頃、姉の初恋の人物である田代が二人の前に現れる….


今年の一本目は、あの傑作「晩春(1949年)」の翌年に小津が撮った作品。年末に読み終えた高峰秀子の「わたしの渡世日記」にも結構詳しく紹介されていた。

最初、笠智衆扮する節子・満里子姉妹の父親の末期がんが判明するシーンから始まるんで、再び父娘間の情愛をしみじみと堪能させて頂けるのかと思っていたら、その後、病気の父親はそっちのけで節子、亮助(山村聡)それに田代(上原謙)を加えた三角関係が中心になってストーリーが展開する。

まあ、そこは小津作品なんで、三角関係とはいっても(後述の一か所を除き)あまり感情的な部分は表面に現れてこないんだけど、節子&亮助夫婦間の内面的な葛藤は結構ドロドロもの。亮助は節子の献身を最期まで愛情として受け取ることができず、一方の節子も自分が結果的ではあるにしろ(?)亮助を傷つけていることを理解しようとしない。そんな亮助が節子を激しく打擲するシーンはちょっと衝撃的ですが、なんか彼の気持ちも解るような気がする。

さて、お目当ての高峰秀子狂言回し的な役どころで、姉夫婦を別れさせて節子を田代とくっ付けようと孤軍奮闘する。現代っ娘(といっても50年以上昔のだけど)の彼女は海外生活の長かった田代とは気が合うようで、ユーモラスな二人の会話シーンは見ていてなかなか楽しかったです。

ということで、節子&亮助シーンと満里子&田代シーンとの落差が大きく、ちょっとまとまりに欠けるような印象もあるが、久々に見た小津作品はやっぱり悪くない。田中絹代は溝口作品とはまた違った一面を見せており、田代と別れた後に節子が見せる一種吹っ切れたような表情はちょっと不気味なほど印象的です。