ロード・ジム

1965年作品
監督 リチャード・ブルックス 出演 ピーター・オトゥールイーライ・ウォラック
(あらすじ)
一等航海士のジム(ピーター・オトゥール)は、嵐の海で座礁した貨客船から乗客を見捨てて逃げ出し、航海士の資格を剥奪されてしまう。落ちぶれた彼は荷役人夫として港から港へ渡り歩く生活を送っていたが、ふとしたことから東南アジアの奥地で圧政の限りを尽くす“将軍”と呼ばれる男(イーライ・ウォラック)の存在を知り、彼を倒そうとする村人たちに武器や火薬を届けるという危険な仕事を依頼される….


この作品を見ていて「地獄の黙示録(1979年)」を思い出したのだが、両者とも原作者(ジョゼフ・コンラッド)が同じなんだね。イーライ・ウォラック扮する将軍は、あのカーツ大佐をもっと解りやすくしたような人物で、「地獄の黙示録」の理解を深める上でとても参考になった。

ということで、ジム君は村人たちに協力して将軍を倒し、みんなから“ロード=英雄”と呼ばれるようになるんだけど物語はまだ終わらない。将軍の次はジェームズ・メイソン扮するところの“紳士”なる人物が唐突に現れ、老獪な彼の口車にまんまと乗せられてしまったジム君は大切な友人(イチゾウ・イタミ!)の命とともに村人の信頼を失い、失意の中で死んでいく….。

まあ、こういったストーリーの方が高尚なのだろうが、“ヒーローになりきれなかった男”というピーター・オトゥールのキャラ設定が「アラビアのロレンス(1962年)」と被っているせいもあって、個人的には後半部分はイマイチかなあ。前半の将軍v.s.村人の戦いは感動的なシーンもちりばめられていてとてもおもしろかったので、(娯楽作品って言われても良いから、)もっとこっちを膨らまし、村人たちが勝利したところでメデタシメデタシにしていただけたら有り難かった。

出演陣のほうも結構豪華なんだけど、中でも将軍に扮したイーライ・ウォラックがいいね。外見がいつもと違ってこざっぱりしているので最初誰だか解らなかったが、野蛮な暴君のようでいてその実人間観察に長けた冷酷な繊細さを併せ持つ・・・というキャラをプロっぽく演じている。彼とピーター・オトゥールとの心理戦をもっとじっくり見てみたかったです。