或る殺人

1959年作品
監督 オットー・プレミンジャー 出演 ジェームズ・スチュワート、リー・レミッック
(あらすじ)
ライバルに州検事の職を奪われ、失意の日々を送る弁護士のポール・ビーグラー(ジェームズ・スチュワート)のもとに、殺人罪で起訴された夫の弁護を依頼する電話がかかってくる。電話の主は美しい人妻のローラ・マニオン(リー・レミッック)で、夫のフレデリックは彼女がレイプされたことを知り、怒りに我を忘れてその犯人を射殺してしまったとのことであった….


ローラ殺人事件(1944年)」に続くオットー・プレミンジャー作品だが、ジャズをBGMにソウル・バスを思わせる洒落たタイトルバックで始まる本作の方が、いかにも俺のイメージするプレミンジャーらしい。

全体の3分の2くらいは裁判劇であり、ジェームズ・スチュワート扮する初老の弁護士とジョージ・C・スコット扮する切れ者検察官との間で火花を散らす論争が繰り広げられる。まあ、ジミーにとって演説はお手のものであり、「スミス都に行く(1939年)」の頃は相手の良心に訴えかけるだけであったが、それから20年たった本作では陪審員の判断を自分に有利な方向へ誘導するため、ユーモアを交えつつ結構老獪なところも見せてくれる。

裁判では、ベン・ギャザラ扮するフレデリックが犯行時に正常な判断能力を有していたか、そしてその前提として妻のローラが本当にレイプされたのかということが重要な争点になる。しかし、彼等が夫婦そろっていかにも胡散臭く、一筋縄ではいかないような人物として描かれていることもあって、ジミーの熱の入った弁護にもかかわらず、彼等が裁判に勝てるかどうかは最後まで全く予想がつかない。

結局、映画の中では検察側の自滅(?)により無罪ということで決着が付くのだが、本当にそれでよかったのかどうかは映画が終わっても不明のままであり、まあ、そんな皮肉な終わり方もプレミンジャー作品らしいところなんだろう。

ということで、あまり予備知識なしに観たのだが結構面白い作品だった。それと、劇中、レイプがあったことの重要な証拠として提出されるローラのパンティがとってもデカいのには、なんとも時代を感じてしまいました。